大阪市の耐震補助で最初に押さえるのは金額ではなく順序です。診断・設計・改修工事・除却の4段階にそれぞれ補助がある一方、市の交付決定通知を受ける前に契約や着手をすると補助を受けられなくなるとパンフレットに明記されています(大阪市)。本記事は大阪市・大阪府・国土交通省の公式資料をもとに、令和8年度(2026年度)の補助内容と、相続した実家で申請するときの要件を整理しました。
守るべき一点は、手をつける前に受付窓口へ相談し、交付申請を出し、交付決定通知が届いてから契約すること。工務店が善意で「先に始めておきますね」と着工した時点で、その段階の補助は消えます。
4段階それぞれに補助がある仕組み
大阪市の制度は、平成12年(2000年)5月31日以前に建築された市内の民間住宅を対象に、耐震化を段階ごとに支える構成です。令和8年度の補助内容は次のとおりで、補助金額は「補助対象費用に補助率を乗じた額」と「限度額」のうち一番低い額になります(大阪市)。
段階 | 補助率 | 限度額(1戸あたり) | 令和8年度の申請締切 |
|---|---|---|---|
耐震診断 | 11分の10 | 5万円(1棟20万円) | 12月28日 |
耐震改修設計 | 3分の2 | 10万円(1棟18万円) | 12月28日 |
耐震改修工事 | 2分の1 | 115万円 | 12月15日 |
解体工事(耐震除却工事) | 3分の1 | 70万円(1棟140万円) | 12月28日 |
診断・改修工事・除却工事には別途床面積による上限があり、予算額に達すると受付を停止・終了することがあります(大阪市)。令和8年度から改修工事と除却工事の限度額等が拡充されています。
注目したいのは診断の補助率が11分の10と高い点です。「直すかどうか」を決める前の情報収集を、市はほぼ全額支える形にしています。狙いは国土交通省の「令和17年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消する」という目標と揃っています(国土交通省・大阪市)。

交付決定通知が「境界線」になる理由
最大の注意点は、契約・着手が交付決定通知の前か後かで補助の有無が分かれることです。パンフレットには「通知を受ける前に耐震診断等の契約または着手を行った場合、補助を受けることができなくなります」と書かれ(大阪市)、要綱第17条も交付決定通知日以降に契約を締結し着手しなければならないと定めています(大阪市要綱)。
編集部の整理では、手続きは次の一本道です。
- 事前相談:事前相談書・外観写真(原則2方向以上)・固定資産(家屋)評価証明書・間取り図を受付窓口へ
- 交付申請:診断・設計は着手予定日の30日前、改修工事は工事請負契約予定日の45日前まで
- 交付決定通知:申請から約1か月(改修工事は約1.5か月、書類の訂正期間を除く)
- 契約・実施:通知が届いてから契約
- 実績報告 → 額確定 → 請求 → 入金:請求から約1か月後に振込
手順と日数は大阪市パンフレットの記載です。支払いは申請者名義で行い、現金払いや他人名義の支払いは認められません(大阪市)。兄弟で直す場合、代表者以外の口座から工事代金を振り込むとこの要件に触れます。
診断→設計→工事の「前段階必須」
4段階は独立していません。耐震改修設計は耐震診断の結果に基づいて行われるものであること、耐震改修工事は診断の結果耐震性が不足していると判断され、かつ設計が実施されていることが要件です(大阪市)。除却工事も「耐震診断の結果、所定の耐震性が不足していると判断されたもの」が前提です。
つまり、どの出口を選ぶにせよ入口は診断です。診断と設計をまとめて申請できる「耐震診断費補助制度Ⅱ型(パッケージ耐震診断)」もあり、Ⅱ型からⅠ型(診断のみ)への変更は可能とされています(大阪市パンフレット)。
判定の物差しは、木造住宅では上部構造評点です。0.7未満は「倒壊する可能性が高い」とされ、大阪市の改修工事補助は各階の評点を1.0以上にする工事などを対象にしています(大阪市・大阪府)。
ここで逆算が要ります。改修工事の交付申請は12月15日締切で契約予定日の45日前、その前に設計、さらに前に診断の交付決定(約1か月ずつ)と実施が必要です。年度内に工事の交付決定まで進めるなら、夏までに事前相談を済ませておくのが編集部の目安です。実際の日程は窓口で確認してください。

相続した実家で申請できる人と居住要件
申請できるのは、建物所有者、その配偶者または一親等以内の親族(親・子)、建物を取得し自ら居住しようとする方です(大阪市)。親名義のままの実家で子が申請する形も、この定義に入ります。
ただし段階によって居住要件が違います。パンフレットの要件一覧では、診断Ⅱ型・設計・改修工事に「現に居住している又はこれから居住しようとする住宅であること(貸家など、申請者以外の方の居住を含む)」が付いていますが、診断Ⅰ型と除却工事の欄にはこの記載がありません(大阪市パンフレット)。取扱い資料でも、診断費補助と除却費補助は今後居住予定のない空き家住戸も対象になると示されています(大阪市取扱い6-3)。
相続した実家の出口別に整理すると、次のようになります。
出口 | 使える段階 | 前提となる居住の形 |
|---|---|---|
住む | 診断→設計→改修工事 | 「これから居住しようとする」に該当 |
貸す | 診断→設計→改修工事 | 貸家として他人が居住する形も可 |
壊す | 診断→除却工事 | 空き家のままでも診断・除却は対象 |
共有の場合の同意も段階で異なります。耐震診断は申請者以外の共同所有者の同意書が不要ですが、改修工事と除却工事は共同所有者全員の実印同意書と印鑑登録証明書が必要で、所有者が死亡し相続人が決まっていない場合は全ての法定相続人が対象になります(大阪市取扱い)。加えて、相続で建物を取得した場合は被相続人の納税義務も相続されるため、被相続人名義の固定資産税・都市計画税の納税証明書が要ります(大阪市取扱い15-3-2)。相続登記が済んでいないなら、相続登記の期限と並行して進めることになります。
昭和56年と平成12年—府と市の線の違い
大阪府の補助制度の基本線は昭和56年(1981年)5月31日以前の木造住宅で、市町村によっては独自に建築年度を拡大しています(大阪府)。大阪市はその拡大した側で、平成12年5月31日以前まで対象です。
なぜ平成12年か。大阪府は、平成28年(2016年)4月の熊本地震で、新耐震基準でも接合部等の規定が明確化される前の木造住宅に倒壊等の被害が確認されたことを挙げています(大阪府)。2本の線の意味は旧耐震の実家をどうするかで詳しく扱っています。
府の要件には、設計・改修について課税所得金額5,070,000円未満(めやす年収910万円)という所得の線もあります(大阪府)。大阪市の要綱別表でも、昭和56年5月31日以前の建物では課税(所得)証明書が必要書類に入っています。所得が補助にどう影響するかは窓口で確認してください。
淡路・崇禅寺から向かう受付窓口
大阪市の受付窓口は大阪市住宅供給公社(大阪市住まい公社)で、所在地は大阪市北区天神橋6丁目4番20号、大阪市立住まい情報センター4階5番窓口、電話06-6882-7053です(大阪市)。パンフレットはOsaka Metro谷町線・堺筋線「天神橋筋六丁目」駅3号出口の利用を案内しており、淡路駅からは阪急千里線で天神橋筋六丁目駅へ向かえる位置関係です。
開館は平日・土曜9時〜17時半、祝日10時〜17時、休館日は火曜(祝日の場合は翌日)・日曜・祝日の翌日(月曜を除く)・年末年始です(大阪市)。郵送や行政オンラインシステムでの提出も受け付けています。
知っておきたい事実が一つ。大阪府は「耐震検査で大阪府から来た」と説明して訪問する業者の連絡を複数受けており、行政職員がその場で耐震診断を実施することはなく、補助金は本人からの事前申請が必要だと注意喚起しています(大阪府)。国土交通省も個別の住宅の診断や改修は直接行っていません(国土交通省)。申請より先に来る診断は制度の外です。
地盤や揺れやすさは上町断層帯と北大阪の地震、壊す側の別制度は大阪市の空き家解体補助で整理しています。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- 大阪市の耐震補助は診断・設計・改修工事・除却の4段階にそれぞれあり、令和8年度は改修工事1戸115万円、除却1戸70万円が限度
- 交付決定通知の前に契約・着手すると補助を受けられない。事前相談→交付申請→通知→契約の順序が前提
- 設計は診断の結果、工事は診断と設計の実施が要件。入口は診断で、年度内に工事まで進めるなら早めの相談が要る
- 申請できるのは所有者・配偶者・一親等の親族・取得して住む人。設計と改修工事には居住(貸家含む)の要件、診断Ⅰ型と除却は空き家も対象
- 共有なら改修・除却は共有者全員の実印同意、相続なら被相続人名義の納税証明が必要
補助額・要件・締切は年度ごとに変わります。最新の内容は大阪市の公式ページと受付窓口で、個別の可否は建築士など専門家にご確認ください。
※本記事の情報は2026年9月時点の公式公表資料に基づきます。
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出典
- 大阪市「民間戸建住宅等の耐震診断・改修等補助制度」(2026年9月17日閲覧)
- 大阪市「令和8年度版 戸建住宅等の耐震補助制度パンフレット」(2026年9月17日閲覧)
- 大阪市「大阪市耐震診断・改修補助事業要綱(本文)」最終改正 令和8年9月1日(2026年9月17日閲覧)
- 大阪市「補助事業に係る取扱い」(2026年9月17日閲覧)
- 大阪府「木造住宅の耐震化について」(2026年9月17日閲覧)
- 国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」(2026年9月17日閲覧)



