相続した実家を解体する場合、大阪市には解体費の一部を補助する制度があります。代表が「狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度」で、令和8年度に補助率の一部引き上げと補助限度額の拡充が行われました。本記事は大阪市の公表資料をもとに、要件と窓口を整理したものです。

結論:対象と金額

制度は地区の指定によって2段階に分かれます。


対策地区

重点対策地区

道路の幅員

4m未満に面する敷地等

6m未満に面する敷地

建築時期

昭和25年以前の木造住宅

昭和56年5月31日以前の木造住宅

補助率

1/2以内

4/5以内

限度額(戸建)

105万円/戸

170万円/戸

限度額(集合)

80万円/戸

125万円/戸

補助額の計算はこうなります。

``` ①解体および整地に要する費用(契約金額) ②市が定める額 27,000円/㎡ → ①と②の低い方 × 補助率(1/2 または 4/5) ※限度額まで ```

契約金額そのものに補助率を掛けるのではなく、㎡単価の上限が挟まるという構造です。見積が高くても、②で頭打ちになります。

File:Shin-Ōsaka Station.jpg
File:Shin-Ōsaka Station.jpg

見落とされやすい点:地区の指定が前提

この制度は、大阪市内のどこでも使えるわけではありません。対策地区・重点対策地区として指定された区域が対象です。

つまり確認の順番は、

1. 物件が対策地区・重点対策地区に入っているか 2. 道路の幅員が要件を満たすか 3. 建築時期が要件を満たすか

の3段階になります。1で外れると、2と3を満たしていても使えません。

そして1は、地図の上でしか分かりません。登記事項証明書にも固定資産税の課税明細にも書かれていない情報です。「古い木造だから対象だろう」と見込んで解体の段取りを進めると、後から外れることになります。

相続した実家が北大阪のどこにあるかによって結論が変わるため、解体業者に見積を頼む前に、まず窓口で地区を確認するのが順番として無駄がありません。窓口は下記のとおり大阪市立住まい情報センターです。

補助制度は年度ごとに要件や金額が見直されます。令和8年度に拡充されたということは、過去に「対象外」と言われた記憶があっても、いまは変わっている可能性があるということでもあります。

「売れない家ほど壊す補助が出る」という構造

ここが、この制度の特徴的なところです。

補助の要件は「幅員4メートル未満の道路に面する」こと。ところが、幅員4メートル未満の道は、実家が売れない最大の理由—建築基準法上の道路に接しているかで整理したとおり、建て替えが難しく、売りにくい条件そのものです。

``` 幅員4m未満の道に面する ├─ 売る側 … 建て替えにくい/買主がローンを組みにくい = 売りにくい └─ 壊す側 … 狭あい道路沿道の老朽住宅として 解体費の補助対象になりうる ```

売りにくい条件と、補助が出る条件が重なっています。 市の側から見れば、狭い道沿いの老朽木造住宅を減らして道を広げたい、という政策目的があるためです。

したがって、「売れないから困っている」家は、そのまま「解体補助を使える」家である可能性があります。売却がうまくいかない段階で、この制度の対象かどうかを一度確認する価値があります。

JR新大阪駅外観
JR新大阪駅外観

もうひとつの一致:昭和56年5月31日

重点対策地区の緩和要件は「昭和56年5月31日以前建築」です。

この日付は、他の場面でも出てきます。

制度

日付の意味

建築基準法の新耐震基準

この日までに建築確認を受けたものが旧耐震

空き家の3,000万円特別控除

昭和56年5月31日以前に建築されたことが要件

重点対策地区の解体補助

昭和56年5月31日以前の木造住宅まで対象

同じ1本の線が、税制でも補助金でも使われています。 実家の建築時期がこの日より前かどうかは、空き家の3000万円控除—先に確かめる3つは変えられないの判定でも最初に見る項目です。一度調べれば、複数の制度の可否がまとめて判断できます。

解体を選ぶときに、補助と一緒に見ること

補助が出るからといって、解体が有利になるとは限りません。解体すると住宅用地特例が外れ、翌年から土地の固定資産税が上がります。この点は空き家を持ち続ける費用—固定資産税が3段階で変わる仕組みで整理しました。

つまり、判断材料は次の3つを並べる形になります。


内容

一時の支出

解体費 −(補助額)

毎年の増加

住宅用地特例が外れることによる固定資産税・都市計画税の増加

得られるもの

更地としての売りやすさ/管理の手間が減ること

補助は一時の支出だけを軽くします。毎年の増加は残るので、「補助が出るから壊す」ではなく、売却の見込みとセットで考えるほうが判断を誤りにくくなります。

なお、空き家の3,000万円特別控除は「家屋を取り壊して敷地を売る」形でも要件を満たし得ます。解体・補助・控除・売却が一連でつながるケースがあるため、順番と期限をそろえて確認する価値があります。

他に使える制度と窓口

大阪市は、空き家に関して次のような制度を挙げています。

  • 空家利活用改修補助事業
  • 民間戸建住宅等の耐震診断・改修等補助制度
  • 狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度(本記事)
  • 防災空地活用型除却費補助制度(解体後の跡地を防災空地として活用する場合、解体費および空地整備費の一部を補助)
  • 子育て世帯等向け民間賃貸住宅改修促進事業
  • 住宅省エネ改修促進事業

解体だけでなく、改修して使う側にも制度があるという並びです。4択のうち「壊す」と「貸す」の両方に補助の選択肢があることになります。

窓口

用途

窓口

除却補助の申請

大阪市北区天神橋6丁目4-20 大阪市立住まい情報センター4階/06-6882-7053

空き家全般の相談

計画調整局 建築指導部 建築企画課(大阪市役所3階)/06-6208-8759

一般的な問い合わせ

大阪市総合コールセンター 06-4301-7285(8時〜21時・年中無休)

地域の相談・通報

各区役所(空き家の所在地を担当)

まとめ

限度額は戸建105万円、重点対策地区なら170万円。 補助率は1/2以内、重点対策地区は4/5以内です。

地区の指定が前提。 幅員と建築時期を満たしても、区域外なら使えません。

売りにくい条件と補助の条件が重なる。 幅員4メートル未満の道沿いは、その両方に当てはまります。

昭和56年5月31日は複数の制度で共通の線。 一度調べれば税制の判定にも使えます。

4択全体の整理は相続した空き家の4択—売る・貸す・住む・壊すを分ける条件にあります。制度の内容は年度で変わります。申請の前に必ず窓口へご確認ください。

あわせて読みたい

出典

  • 大阪市「狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度」(2026年8月10日確認)
  • 大阪市「空き家の適正管理・利活用について」(2026年8月10日確認)
  • 大阪市「密集住宅市街地の整備と補助金制度について」(2026年8月10日確認)