空き家を持ち続ける費用のうち、制度で金額が決まっているのは固定資産税と都市計画税です。そしてこの2つは毎年一定ではありません。住宅用地特例が効いている状態、勧告を受けて改善しなかった状態、更地にした状態で、課税標準そのものが変わります。本記事は大阪市と国土交通省の公表資料をもとに、その3段階を整理したものです。
データの提示—200㎡を境に軽減の割合が変わる
住宅が建っている土地には課税標準の特例があります。大阪市の公表資料では次のとおりです。
区分 | 面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅1戸当たり200㎡以下 | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
上限は家屋の延べ床面積の10倍までです。専用住宅は敷地全体、併用住宅は敷地に住宅用地率を乗じた面積が対象になります。
たとえば敷地300㎡であれば、200㎡分が小規模住宅用地、残り100㎡が一般住宅用地として、1つの敷地の中で割合が分かれます。

データの読み方—費用は3段階で動く
ここから読み取れるのは、維持費が固定ではなく状態によって段の変わる階段になっている、ということです。
段階 | 状態 | 土地の課税標準 |
|---|---|---|
① 通常 | 家屋が建っている | 6分の1(200㎡以下)/3分の1(超える部分) |
② 勧告後 | 勧告を受け、1月1日までに改善せず | 特例が外れる |
③ 更地 | 解体して家屋が無い | 特例が外れる(建物分の税は消える) |
②と③は、土地について同じ結果になります。 大阪市も、空家法に基づく勧告を行った場合、その敷地は「住宅用地の課税標準の特例の対象から除外されることになります」としています。
つまり、放置し続けても、壊しても、土地の扱いは同じ場所に行き着きます。
特例が外れる入口は1つしかない
ここで、よくある心配を整理しておきます。「空き家だから特例が外れるのではないか」という不安です。
制度の作りを見ると、特例が外れる経路として示されているのは、勧告を受けて賦課期日までに改善しなかった場合です。大阪市も、空家法に基づく勧告を行った場合にその敷地が特例の対象から除外される、という書き方をしています。
つまり、入口は1つです。誰も住んでいない期間が長いこと自体を理由に、自動的に段が上がる仕組みにはなっていません。①から②へ移るには、自治体の判断と勧告という手続きを経る必要があります。
このことは、2つの意味を持ちます。
焦って解体する理由にはならない。 通知が何も来ていない状態であれば、①のままです。解体すれば③へ自分から移ることになります。
通知が来たら、それが唯一の合図。 助言・指導や勧告の通知は、②へ移る手続きが始まったという意味です。この通知を放置することだけが、②へ進む条件を満たします。 郵便物を確認できる状態にしておくこと自体が、費用の管理になります。
遠方に住んでいて実家の郵便を受け取れていない場合、この合図を見落とします。転送手続きをしておくかどうかが、税額の話につながります。

比較—更地にすると建物分は消えるが、土地が上がる
③だけに固有の要素があります。建物が無くなるので、建物分の固定資産税が消えます。
ここで、相続した空き家に特有の事情が効いてきます。建物の評価額は経年で下がる一方、土地の課税標準は6分の1から軽減前へ戻ります。
築年数が古い家ほど、消える側(建物分)は小さく、増える側(土地分)は大きいという関係になります。「古い家だから壊したほうが安くなる」という見立ては、この点で反対に働くことがあります。
しかも解体には費用がかかります。支出をして、翌年から税額が上がるという順番です。
何に使うか—自分がどの段にいるかを先に確定する
1. 自分は①か②かを確認する。 自治体から助言・指導や勧告の通知が来ていなければ①です。放置しているだけで自動的に②になるわけではありません。 ②へ移るには、特定空家等または管理不全空家等として勧告を受け、賦課期日である1月1日までに改善しなかったという2つの条件がそろう必要があります。
2. 敷地面積を確認する。 200㎡以下かどうかで軽減の割合が違い、②③に移ったときの上がり幅も変わります。登記事項証明書で確認できます。
3. ③を選ぶ前に②の金額と比べる。 土地の税額は②でも③でも同じ結果になります。違うのは解体費用を払うかどうかと、タイミングを自分で選べるかどうかです。
4. 税以外の費用も並べる。 通水・換気・草木の管理、火災保険、遠方であれば交通費が発生します。これらは制度で決まる金額ではないため、実額を見積もる必要があります。持ち続けるか手放すかを比べるときは、制度で決まる部分(税)と、実額を調べないと分からない部分(管理・保険・移動)を分けて並べると判断がぶれません。
まとめ
軽減されているのは200㎡以下が中心。 固定資産税6分の1・都市計画税3分の1で、超える部分は3分の1・3分の2です。
費用は3段階で動く。 通常・勧告後・更地。勧告後と更地は、土地について同じ結果になります。
更地は必ずしも安くならない。 建物分の税は消えますが、築年数が古いほどその額は小さく、土地側の増加が上回ることがあります。
4択全体の判断は相続した空き家の4択—売る・貸す・住む・壊すを分ける条件に整理しました。個別の税額は、物件所在地の自治体の税務窓口へご確認ください。
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出典
- 大阪市「住宅用地の課税標準の特例措置」(2026年8月10日確認)
- 大阪市「都市計画税」(2026年8月10日確認)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」(2026年8月10日確認)


