令和5年住宅・土地統計調査(総務省、2023年10月1日現在)で大阪市の空き家率は 16.1% です。全国の 13.8% を上回りますが、前回の平成30年(2018年)17.1% からは 1.0 ポイント低下 しました。北大阪の中心となる淀川区は 14.6%、東淀川区は 16.4%。本記事は総務省・大阪市の公式集計をベースに、「空き家率が高い=放置された廃屋が多い」という直感がなぜ大阪では当てはまりにくいのかを、賃貸ストックの厚さから整理します。
数値は令和5年住宅・土地統計調査(確報集計)と大阪市「結果の概要」に基づきます。
大阪市の空き家率は16.1%、全国より高い
大阪市の令和5年時点の数値を、全国と並べて整理します。
区分 | 空き家数 | 空き家率 | 前回(平成30年)比 |
|---|---|---|---|
全国 | 900万2千戸 | 13.8% | +0.2 ポイント(過去最高) |
大阪市 | 29万4600戸 | 16.1% | −1.0 ポイント |
大阪市の空き家率 16.1% は、全国平均を 2.3 ポイント上回ります。一方で全国が過去最高を更新して上昇したのに対し、大阪市は前回から低下したのが特徴です。
空き家の実数は前回から 8500 戸(3.0%)増えています。増えているのに率が下がったのは、分母にあたる住宅総数が 182 万 7900 戸 へと 15 万 2000 戸(9.1%)も伸びたためです。分母の増加が分子を上回ったことで、率としては 17.1% から 16.1% へ低下しました。「率の低下」を「空き家が減った」と読むと実態を取り違えます。

北大阪(淀川区・東淀川区)の空き家率
北大阪の主要 2 区は次のとおりです。
区 | 空き家数 | 空き家率(令和5年) | 平成30年 |
|---|---|---|---|
淀川区 | 1万8610戸 | 14.6% | 16.7% |
東淀川区 | 2万390戸 | 16.4% | 18.4% |
大阪市計 | 29万4600戸 | 16.1% | 17.1% |
淀川区は 14.6% と市平均 16.1% を下回り、両区とも前回から低下しています。ただし東淀川区の空き家数 2 万 390 戸は、西成区(2 万 2870 戸)、生野区(2 万 890 戸)に次ぐ市内 3 番目の多さです。率は市平均並みでも戸数が多いのは、両区が住宅総数でも淀川区 12 万 7760 戸・東淀川区 12 万 3970 戸と市内の上位を占める規模の大きな区だからです。
区別の最高は西成区の 25.9%、次いで生野区 22.8%。逆に最も低いのは北区 11.1%、次いで鶴見区 11.3% です。北大阪の 2 区は、この分布のなかでほぼ中位に位置します。
空き家率という数字の中身
空き家率を読むうえで外せないのが、統計上の「空き家」の定義です。住宅・土地統計調査では空き家を次の 4 区分の合計として集計します。
区分 | 内容 |
|---|---|
賃貸用の空き家 | 入居者を募集中の賃貸住宅 |
売却用の空き家 | 売り出し中の住宅 |
二次的住宅 | 別荘・たまに寝泊まりする住宅等 |
その他の空き家 | 上記以外(長期不在・取り壊し予定・放置系を含む) |
つまり空き家率には、いま募集中の賃貸空室が含まれます。全国では「賃貸・売却用や二次的住宅(別荘など)を除くその他の空き家」は 385 万 6 千戸で、空き家 900 万 2 千戸の一部にとどまります。世間で「空き家問題」として語られる放置系はこの「その他」に近く、空き家率そのものとは重なりません。

大阪市の空き家率が高めに出る理由
大阪市の空き家率が全国より高く出る背景には、住宅ストックの構成があります。大阪市は共同住宅(マンション・アパート)の割合が 75.1% と、全国の 44.9% を大きく上回ります。大阪府単位でも共同住宅の割合は 57.4% と、東京都・沖縄県に次ぐ全国 3 番目です。
賃貸中心の共同住宅が多いということは、募集中の空室、すなわち「賃貸用の空き家」が総住宅数のなかに常に一定数積み上がることを意味します。本記事の整理では、大阪市や北大阪の空き家率の高さは、放置廃屋の多さより先に 賃貸市場の在庫の厚さ として読むのが実態に近いと判断します。この点は、大阪市の持家率が政令市で最低クラスという住居形態の特徴と表裏一体です。持家率の側面は 持家率40%の大阪市、全国60%—「借りて住む街」の正体 で整理しています。
ただし、区別に「賃貸用」「その他」の内訳がどう分かれるかは、大阪市「結果の概要」では総数ベースの公表にとどまり、要確認です。放置系の空き家がどの程度含まれるかを区単位で断定することはできません。
住まい選びでの使い方
北大阪で住まいを探す立場から、この統計は次のように使えます。
- 借り手にとって:空き家率が市平均並み〜やや高めの東淀川区(16.4%)は、募集中の賃貸在庫が相対的に多い区と読めます。選択肢の幅という点では有利に働く可能性があります。実際の空室感は最新の家賃相場で確認するのが確実です(北大阪の家賃相場の調べ方)。
- 分譲賃貸を検討する場合:共同住宅比率 75.1%・11 階建以上の高層化率 40.3% という大阪市の構成上、分譲マンションの賃貸放出も選択肢に入ります(北大阪の分譲賃貸という選択肢)。
- 所有・活用の視点:空き家の「その他」区分に踏み込む所有者向けの論点は 北大阪の空き家対策 で扱っています。
2 区の人口・世帯の全体像は 淀川区と東淀川区の人口比較、エリアの住みやすさは 新大阪エリアの住みやすさ / 東淀川エリアの住みやすさ を参照してください。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- 大阪市の空き家率は 16.1%(令和5年、全国 13.8%)。前回 17.1% から 1.0 ポイント低下したが、空き家の実数は 8500 戸増加している
- 率の低下は住宅総数が 9.1% 増えた分母効果によるもので、空き家が減ったことを意味しない
- 北大阪は淀川区 14.6%・東淀川区 16.4%。淀川区は市平均を下回り、両区とも前回から低下
- 空き家率は賃貸用の空室を含む総住宅ベースの指標で、放置廃屋の多さとは別。共同住宅 75.1% の大阪市では賃貸在庫の厚さとして読むのが実態に近い
- 区別の「賃貸用/その他」内訳は公表範囲外で要確認。最新の数値は総務省統計局・大阪市の公式ページでご確認ください
※ 本記事の情報は 2026 年 7 月時点の令和5年住宅・土地統計調査(確報集計)に基づきます。


