遺産分割がまとまらないまま時間が経つと、実家は相続人全員の共有になります。この状態は「何も決まっていない」ように見えますが、義務と期限は動いています。本記事は法務省の公表資料をもとに、共有のまま持つと何が起きるかを整理したものです。

対象は、兄弟や親族の間で話がまとまらず、北大阪の実家を宙ぶらりんのまま抱えている方です。

Q1: まとまらないと、実家はどういう状態になりますか?

相続人全員の共有です。

この状態でも登記そのものはできます。ただし、その後の行為に全員が関わることになります。

やりたいこと

共有状態での扱い

売る

全員の関与が必要

貸す

同上

解体する

同上

相続登記(法定相続分での登記)

可能

問題は「決まらないこと」そのものより、決まらない間も家が劣化し、費用が発生し続けることです。維持費は空き家を持ち続ける費用—固定資産税が3段階で変わる仕組みにまとめました。

そして相続人が亡くなると、その人の相続人がさらに加わります。関係者が増えるほど、まとめるのは難しくなります。

米原駅ホーム
米原駅ホーム

Q2: 分割がまとまらなくても、登記の義務はありますか?

あります。 ここが最も誤解されやすい点です。

相続登記の義務は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」です(不動産登記法第76条の2第1項)。分割が成立したかどうかとは、別に進みます。

「話がまとまってから登記すればいい」と考えていると、期限だけが過ぎます。

まとまらない場合の受け皿として用意されているのが相続人申告登記(同法第76条の3)です。登記名義人について相続が開始したことと、自分がその相続人であることを法務局に申し出る手続きです。

Q3: 相続人申告登記をすれば、全員の義務が済みますか?

済みません。 法務省のQ&Aは次のように説明しています。

> 申出をした相続人についてのみ、相続登記の義務を履行したものとみなされます

兄弟のうち一人が代表して申し出ても、他の相続人の義務は残ります。 全員が義務を果たすには、全員が申し出る必要があります。

揉めている状況で「代表者が手続きしておいたから大丈夫」となりやすい部分ですが、義務は各自にかかります

なお、相続人申告登記は所有権が移る登記ではないため、この状態では売却の前提が整いません親名義のままでは売れない—売却前に必要な登記は3種類ある)。

終電後深夜の大阪駅
終電後深夜の大阪駅

Q4: 分割が成立したら、それで終わりですか?

終わりません。 期限がもう一度動きます。

法務省は、「遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた所有権の移転の登記を申請することが義務付けられました」としています(不動産登記法第76条の2第2項、第76条の3第4項等)。

``` ① 取得を知った日 ──3年──▶ 相続登記 または 相続人申告登記 ② 遺産分割の成立日 ──3年──▶ 分割の内容に応じた登記 ```

①を申告登記で凌いでも、②は新たに発生します。 期限の数え方は相続登記の義務化—3年の期限は二つ、過料は裁判所が決めるで整理しました。

Q5: 揉めている場合、過料の対象になりますか?

法務省は「正当な理由」があると認められる場合には過料通知を行わないとし、その例として次を挙げています。

  • 相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われている場合
  • 義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
  • 生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  • 経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

争っていること自体は、正当な理由として挙げられています。 話し合いがつかない状態を理由に、いきなり過料が科されるという設計にはなっていません。

ただしこれは過料の話であって、分割が進まないこと自体の不利益が消えるわけではありません。共有のまま家は劣化し、費用は発生し、関係者は増えていきます。

制度は「早く分けること」を促す方向に動いている

もう一点、押さえておきたい流れがあります。

法務省は、令和3年の民法改正により「早期の遺産分割を促すための新たなルールが導入されることになった(令和5年4月1日開始)」としています。

つまり、放置するほど不利になる方向へ制度が動いています。 相続登記の義務化も、この流れの一部です。具体的なルールの内容は法務省の資料に示されているため、長期間まとまっていない事案では、早い段階で専門家に確認しておく価値があります。

まとめ

まとまらなくても期限は進む。 相続登記の3年は、分割の成否とは別に動きます。

申告登記は本人の分だけ。 代表者が出しても他の人の義務は残ります。

分割が成立すると、そこから3年が新たに動く。 期限は二段構えです。

争っていることは過料の正当な理由になり得る。 ただし、分割が進まない不利益そのものは残ります。

個別の判断は、法務局または弁護士・司法書士へご確認ください。

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出典

  • 法務省「相続登記の申請義務化について」(2026年8月10日確認)
  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(2026年8月10日確認)
  • 法務省「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」(2026年8月10日確認)