相続した空き家の選択肢は「売る・貸す・住む・壊す」の4つです。ただし、どれを選ぶかは好みで決まりません。それぞれに、判断を分ける条件が1つずつあります。そして売却と解体には期限や税制の分岐があるため、決める順番も決まっています。本記事は国税庁・国土交通省の公表資料をもとに、4択それぞれを分ける条件を整理したものです。
対象は、北大阪で実家などを相続し、当面住む予定がないまま持っている方です。カチタスの「第6回 空き家所有者に関する全国動向調査」(2026年)では、空き家対策で最も意向が高いのは売却で32.8%、買取会社を検討する人は42.8%と2021年比で約2.6倍に増えています。一方で具体的な行動は依然として進んでいないとも報告されています。動けない理由の多くは、判断の材料が揃っていないことにあります。
Q1: 売る—いつまでに売るかで税額が変わりますか?
変わります。ここだけが期限のある選択肢です。
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋やその敷地等を売った場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます(国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
期限は二重にかかります。
``` ① 制度そのものの期限 … 平成28年4月1日 〜 令和9年12月31日 の譲渡 ② 個別の期限 … 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで ```
早く来るほうが実際の期限になります。多くの場合は②です。
さらに注意点が2つあります。譲渡の対価の額が1億円を超えるもの等は対象外であること。そして令和6年1月1日以後に行う譲渡で、家屋および敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は、控除額が2,000万円までになることです。
兄弟3人で相続した実家は、この時点で控除額が3分の2に下がります。名義をどう分けるかは、税額に直結します。
なお売却の前提として名義の整理が必要です。期限の考え方は相続登記の義務化—3年の期限は二つ、過料は裁判所が決めるで整理しています。

Q2: 貸す—貸せる家かどうかは何で決まりますか?
改修費用を何年で回収できるかで決まります。
賃貸には売却のような期限がありません。そのぶん判断は費用対効果に寄ります。空室対策としての改修をどこまでやるかの考え方は、空室対策、まず何から?リフォーム回収5-7年が判断の境目で扱っています。相続した家でも計算の構造は同じです。
賃貸を選ぶと、Q1の3,000万円控除の要件から外れる場合があります。この特例は被相続人の居住用家屋を対象とするもので、貸したあとに売る場合は前提が変わります。「とりあえず貸しておいて、あとで売る」は、税制上は無条件に選べる順番ではありません。
貸すか売るかで迷っている段階では、期限のある売却から先に判断するのが順序として安全です。
Q3: 住む—相続人が住む選択はどう判断しますか?
建築時期が最初の分岐になります。
1981年(昭和56年)6月以降に建築確認を受けた建物は、いわゆる新耐震基準です。この境目の読み方は新大阪で中古マンションを自住購入—1981年新耐震で見る4軸で整理しています。戸建てでも判断の起点は同じで、旧耐震であれば耐震改修の費用が判断に乗ってきます。
住む選択は、4択のなかで唯一税制の期限が関係しないものです。ただし、住んでしまうと3,000万円控除の前提から外れます。ここも「あとで売る」を前提にする場合は、順番に注意が要ります。

Q4: 壊す—更地にすると何が起きますか?
固定資産税・都市計画税が上がる場合があります。
住宅用地に対する課税標準の特例は、家屋があることを前提とした制度です。解体して更地にすると、この特例の適用対象から外れます。解体費用を払ったうえで、翌年から税額が上がる、という順番になります。
「古い家だから壊したほうがすっきりする」という判断は、費用の面では逆に働くことがあります。
ただし、放置すれば安全かというと、そうではありません。
令和5年12月13日に施行された改正空家法で、管理不全空家等という区分が新設されました。適切な管理がなされず、放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態を指します。特定空家等は、倒壊等著しく保安上危険、著しく衛生上有害、景観を著しく損なっている、その他周辺の生活環境の保全上不適切、のいずれかにあたるものです。
そして、いずれかに該当して勧告を受け、賦課期日である1月1日までに必要な措置が講じられない場合、その敷地は住宅用地特例の適用対象から除外されます(東京都主税局)。
つまり、壊しても、放置しすぎても、行き着く先は同じ「特例が外れた状態」です。違うのは、解体には自分のタイミングと費用の見通しがあり、勧告にはそれが無いという点です。
4択を分ける条件を1枚に
ここまでを1つの表にすると、次のようになります。
選択肢 | 判断を分ける条件 | 期限 |
|---|---|---|
売る | 3,000万円控除が使えるか(相続人の数でも変わる) | あり(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日/制度は令和9年12月31日まで) |
貸す | 改修費用の回収年数 | なし |
住む | 旧耐震か(1981年6月の境目) | なし |
壊す | 住宅用地特例が外れることを許容できるか | なし(ただし勧告を受けると実質的に迫られる) |
期限があるのは「売る」だけです。 だから4択を同時に比べるのではなく、先に売却の可否を判定し、期限内に売らないと決めてから残り3つを比べるのが、判断の順序として無理がありません。
そして買取会社の検討が2021年比で2.6倍に増えている背景には、「残置物を処理してくれる」「現況のままで買ってくれる」「早く買ってくれる」という、手離れの良さへのニーズがあると報告されています。手をかけてから売るか、そのまま引き取ってもらうかも、この期限の中での選択になります。
まとめ
相続した空き家の4択は、好みではなく条件で決まります。
期限があるのは売却だけ。 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日が実質的な期限になります。相続人が3人以上いる場合は控除額が2,000万円に下がります。
「壊す」は税額を下げない。 住宅用地特例は家屋があることが前提で、更地にすると外れます。
放置も同じ結末に向かう。 管理不全空家等または特定空家等として勧告を受け、1月1日までに措置を講じなければ、やはり特例から外れます。
北大阪の空き家がどれくらいあるかは大阪市の空き家率16.1%—北大阪の淀川区・東淀川区で読むで扱っています。個別の適用可否は、税務署または税理士へご確認ください。
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出典
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(2026年8月10日確認)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」(2026年8月10日確認)
- 東京都主税局「特定空家等・管理不全空家等の敷地に対する固定資産税・都市計画税」(2026年8月10日確認)
- 株式会社カチタス「第6回 空き家所有者に関する全国動向調査」2026年(2026年8月10日確認)



