「相続税の申告期限は10か月と聞いたが、遺産分割が終わりそうにない」「実家の土地しかなく、納める現金がない」。実家を相続した方から出やすいこの2つの疑問に、国税庁の公式情報(タックスアンサー)をもとに答えます。個別の税額計算は税理士など専門家にご確認ください。
結論を先に書きます。申告と納税の期限は死亡を知った日の翌日から10か月で、遺産分割が終わっていなくても延びません(国税庁 No.4205・No.4208)。分割未了なら法定相続分で仮に申告・納税し、特例は申告期限から3年以内に分割できれば後から取り戻せます。延納と物納は、いずれも申告期限までの申請が条件です。
10か月の期限と、過ぎたときの延滞税・加算税
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内に行います(国税庁 No.4205)。例えば1月6日死亡ならその年の11月6日が申告期限で、土日祝に当たるときは翌日が期限とみなされます。
納税の期限も同じです。期限までに納めなかったときは利息にあたる延滞税が、申告をしなかった場合や少ない額で申告した場合には加算税や延滞税がかかる場合があります(国税庁 No.4205)。
延滞税の割合は年ごとに告示されます。令和8年(2026年)1月1日から12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8パーセント、2か月を経過した日以後は年9.1パーセントです(国税庁 No.9205)。2か月を境に割合が3倍超に跳ね上がるのが、期限を過ぎたときにまず知っておきたい構造です。

分割が終わらないときの申告—法定相続分で仮に納める
国税庁は「分割されていないということで相続税の申告期限が延びることはありません」と明記しています(国税庁 No.4208)。
分割協議が成立していないときは、各相続人が民法の相続分(法定相続分)または包括遺贈の割合で財産を取得したものとして計算し、申告と納税をします(国税庁 No.4208)。誰が何を取るか未定でも、頭割りした前提の税額を期限内に現金で納めるということです。
その後に分割が行われて税額が変わるときは、多くなれば修正申告、少なくなれば更正の請求をします。更正の請求ができるのは分割のあったことを知った日の翌日から4か月以内です(国税庁 No.4208)。相続税の計算そのものは基礎控除の額と人数の数え方で整理しています。
特例を取り戻す3つの期限—時間軸での整理
未分割申告でいちばん痛いのは、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が当初の申告では適用できないことです(国税庁 No.4208)。実家の土地に小規模宅地等の特例を使うつもりでも、未分割のままだと減額前の評価額で仮の税額を納めることになります。
ただし、取り戻す道は用意されています。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出しておき、申告期限から3年以内に分割されれば、分割の翌日から4か月以内の更正の請求で特例の適用を受けられます(国税庁 No.4208 Q&A)。3年経過日に相続に関する訴えが提起されているなどやむを得ない事情がある場合は、その翌日から2か月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出して承認を受ける手続があります(同)。
編集部では、出典も起点もばらばらなこれらの期限を、1本の時間軸に並べ直しました。
順番 | 起点 | 期限 | 何をするか(出典) |
|---|---|---|---|
1 | 死亡を知った日の翌日 | 10か月 | 申告・納税。未分割なら法定相続分で仮申告+分割見込書(No.4205・4208) |
2 | 同上 | 10か月 | 延納・物納の申請書提出(No.4211・4214) |
3 | 申告期限 | 3年 | この間に分割できれば特例を後日適用(No.4208) |
4 | 3年経過日の翌日 | 2か月 | やむを得ない事情の承認申請(No.4208 Q&A) |
5 | 分割のあった日の翌日 | 4か月 | 更正の請求。特例適用はここで取り戻す(No.4208) |
6 | 申告期限 | 10年 | 延納途中で払えなくなったときの物納への変更(特定物納)(No.4211) |
こうして並べると、分割見込書を1枚添付するかどうかが、3年後の特例の入口を開けたままにするかを決めていることが見えます。

現金が足りないときの延納—担保と利子税
国税は金銭で一括納付するのが原則ですが、相続税には年賦(年払い)で納める延納の制度があります(国税庁 No.4211)。要件は次の4つで、すべて満たす必要があります。
- 相続税額が10万円を超えること
- 金銭で納付することを困難とする事由があり、その困難な金額の範囲内であること
- 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること(延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下なら担保は不要)
- 納期限(期限内申告なら申告期限)までに延納申請書と担保提供関係書類を税務署長に提出すること
担保にできるのは国債・地方債、確実と認められる有価証券、土地、保険に附した建物など、保証人の保証に限られ、相続人固有や第三者所有の財産でも構いません(国税庁 No.4211)。相続した土地を担保に入れて延納する組み立てが公式に想定されています。
延納期間は相続財産に占める不動産等の割合で変わり、不動産等に係る延納税額は割合75%以上で最高20年、50%以上75%未満で最高15年、50%未満で最高5年です(国税庁 No.4211)。利子税は「延納特例基準割合」で計算した特例割合が適用され、令和8年1月1日現在の基準割合1.3パーセントでは、不動産等に係る延納税額は年0.6パーセントと表示されています(同)。割合は年ごとに変わるため、申請時に所轄税務署で確認するよう国税庁も注記しています。
物納の現実—共有のままでは申請できない
物納は「延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合」に限り、その金額を限度に相続財産そのもので納める制度です(国税庁 No.4214)。申請は納期限(申告期限)までに税務署長に提出します。
充てられる財産には順位があり、不動産や上場株式等が第1順位、非上場株式等が第2順位、動産が第3順位です(国税庁 No.4214)。収納価額は原則として相続税の課税価格計算の基礎となった価額(相続税評価額)で、小規模宅地等の特例を受けた財産は特例適用後の価額になります(同)。
国税庁が挙げる「管理処分不適格財産」(物納に充てられない財産)には、担保権の設定の登記がある不動産、境界が明らかでない土地、二以上の者の共有に属する不動産が含まれます(国税庁 No.4214)。未分割のまま10か月を迎えた不動産は、相続人全員の共有状態です。編集部の読みでは、分割が終わっていない実家を「現金がないから物納で」と考えても、共有のままでは物納の入口に立てない可能性が高く、申請前に税務署または税理士への確認が欠かせません。
共有のまま持つと何が起きるかは共有のリスクを整理した記事で扱いましたが、物納の可否という切り口でも共有状態は選択肢を狭めます。なお、延納でも払えるとされて物納が却下されたときは延納の申請に切り替えられます(国税庁 No.4214)。売却して現金化する道を選ぶなら、取得費が分からないときの譲渡所得の論点も先に押さえておくと判断が早くなります。
淀川区・東淀川区の提出先—東淀川税務署
相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡の時の住所地を所轄する税務署で、相続人の住所地の税務署ではありません(国税庁 No.4205)。東三国や西中島南方など淀川区、または東淀川区に住んでいた方が亡くなった場合、管轄は東淀川税務署です。所在地は大阪市淀川区木川東2丁目3番1号、管轄区域は東淀川区と淀川区で、Osaka Metro御堂筋線西中島南方駅から徒歩10分、開庁時間は平日の午前8時30分から午後5時です(国税庁 大阪国税局)。
署名は「東淀川」ですが庁舎は淀川区側にある、と覚えておくと迷いません。延納・物納の申請書や分割見込書も提出先は同じです。相続登記の管轄(法務局)は税務署とは別で、北大阪の相続登記の管轄で整理しています。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- 相続税の申告・納税期限は、死亡を知った日の翌日から10か月。遺産分割が終わっていなくても延びない
- 未分割なら法定相続分で仮に申告・納税し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付。3年以内に分割できれば更正の請求で特例を取り戻せる
- 延納は税額10万円超・金銭納付困難・担保提供・申告期限までの申請が要件。相続した土地を担保にできる
- 物納は延納でも払えない場合に限られ、共有に属する不動産は管理処分不適格財産として充てられない。未分割の実家はこの壁に当たりやすい
- 期限を過ぎると延滞税。令和8年は2か月まで年2.8パーセント、以後は年9.1パーセント
- 淀川区・東淀川区が被相続人の住所地なら、提出先は東淀川税務署
延納・物納の可否や利子税の割合は年や個別事情で変わるため、申請前に所轄税務署または税理士にご確認ください。
※本記事の情報は2026年9月時点の国税庁公表資料に基づきます。
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出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」(2026年9月17日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.4208「相続財産が分割されていないときの申告」(2026年9月17日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.4211「相続税の延納」(2026年9月17日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.4214「相続税の物納」(2026年9月17日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.9205「延滞税について」(2026年9月17日閲覧)
- 国税庁 大阪国税局「東淀川税務署」(2026年9月17日閲覧)



