相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3ヶ月以内に、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ「申述」する手続きです。大阪市内に住んでいた親の相続なら、申述先は大阪家庭裁判所(本庁)です。本記事は裁判所公式サイトの情報をもとに、流れ・費用・期限の考え方を整理しました。
意外に知られていませんが、手続き自体の手数料は申述人1人につき収入印紙800円分です。数百万円の借金を相続しない選択が、手数料としては1,000円未満でできる仕組みになっています。
相続放棄の基本と「3ヶ月」の起算点
相続が開始すると、相続人は3つの選択肢から選ぶことになります。権利も義務もすべて受け継ぐ単純承認、一切受け継がない相続放棄、得た財産の限度で債務を受け継ぐ限定承認です(東京家庭裁判所の案内)。このうち相続放棄と限定承認は、家庭裁判所への申述が必要です。
相続放棄の申述が受理されると、初めから相続人にならなかったものとみなされます(仙台家庭裁判所の案内)。プラスの資産だけ受け取り、マイナスの負債だけ手放す、という選び方はできません。
期限は、民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内と定められています(裁判所公式)。起算点は死亡日そのものではなく「知ったとき」です。ただし、大阪家庭裁判所の案内では、被相続人の死亡日から3ヶ月を過ぎてからの申述について、相続の開始を知った日に関する書面の提出に触れており、経過後の申述では事情の説明が求められる場合があります。

申述先と費用—大阪市内なら大阪家庭裁判所本庁
申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です(裁判所公式)。基準は申述する側の住所ではありません。新大阪や淡路にお住まいの方でも、親御さんが地方の実家で亡くなった場合は、その住所地の家庭裁判所が申述先になります。
一方、亡くなった方の最後の住所が大阪市淀川区・東淀川区など大阪市内であれば、申述先は大阪家庭裁判所(本庁)です。裁判所の管轄区域表では、大阪市全24区に加えて豊中市・吹田市・摂津市・茨木市・高槻市など北摂の広い範囲も本庁の管轄とされています。
大阪家庭裁判所(本庁)の所在地は大阪市中央区大手前4-1-13、Osaka Metro谷町線・中央線の谷町四丁目駅2番出口から東へ150メートルです(裁判所公式)。
費用は次のとおりです(裁判所公式)。
項目 | 金額 |
|---|---|
収入印紙 | 申述人1人につき800円分 |
連絡用の郵便切手 | 裁判所ごとに異なる(申述先に確認) |
なお、名古屋家庭裁判所の案内では、申述から受理までの目安を約1ヶ月としています。事案や裁判所によって異なるため、あくまで参考値です。
必要書類と区役所での段取り
どの申述でも共通して必要になるのは、相続放棄の申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本です(裁判所公式)。これに加えて、申述人が配偶者か、子か、父母か、兄弟姉妹かという立場に応じて、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式など、揃える書類が変わります。
戸籍謄本や住民票の除票は市区町村の窓口で取得します。淀川区・東淀川区の窓口の場所と取扱時間は北大阪の役所窓口ガイドで整理しています。本籍地が遠方の場合は取り寄せに日数がかかるため、期限から逆算して早めに動くのが安全です。
書類集めが期限に間に合いそうにないときの扱いにも触れておきます。仙台家庭裁判所の案内では、3ヶ月の末日が迫っている場合、全部の添付書類が揃っていなくても、申述書とその時点で揃った書類を先に提出して受付を済ませるよう案内されています。同じ運用かどうかは申述先の家庭裁判所に確認してください。
また、戸籍関係の書類に代えて法定相続情報一覧図の写しを提出できる場合があります(裁判所公式)。相続登記など他の手続きと並行しているなら、検討する価値があります。

放棄を決める前の判断軸—編集部の独自整理
裁判所の案内は手続きの説明が中心で、「自分の場合はどう動くか」までは書かれていません。そこで、公式情報から読み取れる範囲で、場面ごとの判断軸を編集部で独自に整理しました。
場面 | 見るべき軸 | 進め方の目安 |
|---|---|---|
督促状などで負債の多さが判明 | 期限までの残り日数 | 書類収集と並行して申述の準備を進める |
実家の不動産はあるが負債が不明 | 調査が3ヶ月で終わる見込みか | 終わらない見込みなら期限内に伸長の申立て |
疎遠な親族の相続に関わりたくない | 放棄後に相続権がどこへ移るか | 受理後は次順位(父母→兄弟姉妹)が相続人になる点を認識 |
死亡を知らないまま3ヶ月超が経過 | 「知ったとき」がいつかの整理 | 届いた通知書類を保管し、早めに家裁の手続案内や専門家へ |
3行目について補足します。仙台家庭裁判所の案内によれば、子の全員が相続放棄をすると、直系尊属(父母や祖父母)、さらに兄弟姉妹が順次相続人になります。次順位の相続人は、先順位の放棄により自分が相続人となったことを知った日から3ヶ月以内に申述することになります。自分の放棄が親族に影響する構造は、動く前に知っておきたいところです。
なお、この表はあくまで考え方の整理であり、個別の事情で結論は変わります。放棄せずに相続する方向なら、相続登記の3年義務化や相続した空き家の4択が次の論点になります。
3ヶ月で決めきれないときの伸長の申立て
熟慮期間内に相続財産を調査しても、承認と放棄のどちらにするか決められない場合があります。このとき家庭裁判所は、申立てにより3ヶ月の熟慮期間を伸長することができます(裁判所公式「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。
申立てができるのは利害関係人(相続人を含む)と検察官で、申立先は相続放棄と同じく被相続人の最後の住所地の家庭裁判所、費用は相続人1人につき収入印紙800円分です。重要なのは、伸長の申立て自体を3ヶ月の期間内に行う必要がある点です。期限が過ぎてから「延ばしてほしい」とは言えません。
負債の全体像がつかめない、相続財産が各地に散らばっている、といった事情があるなら、期限ぎりぎりで迷うより、早めに伸長の申立てを選択肢に入れるほうが動きやすくなります。
財産に手を付ける前の注意
放棄を少しでも考えているなら、遺産に手を付ける前に立ち止まってください。名古屋家庭裁判所のQ&Aには、次の記載があります。
> 遺産の一部を処分したときは、相続を承認したものとみなされることになり、相続放棄は認められません。もっとも、処分した内容、理由などによっては、相続放棄の申述が受理されることもあります。
(名古屋家庭裁判所「相続放棄の申述」Q&Aより引用)
つまり、遺産の売却などの処分は、放棄の可否そのものに影響し得ます。預貯金の解約・払い戻しや実家の片付けに伴う物の扱いがどう評価されるかは個別の判断になるため、迷う行為は保留し、先に弁護士・司法書士などの専門家や家庭裁判所の手続案内に確認するのが安全です。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- 相続放棄の期限は、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内
- 申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所。大阪市内なら大阪家庭裁判所(本庁・谷町四丁目駅から東へ150メートル)
- 費用は申述人1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手
- 決めきれないときは、期限内に熟慮期間の伸長を申し立てる
- 遺産の処分は放棄の可否に影響し得るため、手を付ける前に確認する
大阪家庭裁判所の本庁は、大阪市の全24区だけでなく豊中・吹田・高槻といった北摂の広い範囲までを1つの庁舎で受け持っています。北大阪のどの駅の近くに住んでいても、この手続きの入口は大手前の同じ建物です。手続きの詳細や書式は裁判所公式サイトで最新の内容を確認し、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
※ 本記事の情報は2026年8月時点の裁判所公式サイトの掲載内容に基づきます。
あわせて読みたい
出典
- 裁判所「相続の放棄の申述」(2026年8月30日確認)
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」(2026年8月30日確認)
- 大阪家庭裁判所「相続の放棄の申述」(2026年8月30日確認)
- 裁判所「大阪府内の管轄区域表」(2026年8月30日確認)
- 大阪家庭裁判所(本庁)所在地・アクセス(2026年8月30日確認)
- 東京家庭裁判所「相続の放棄の申述」案内・令6.10(2026年8月30日確認)
- 名古屋家庭裁判所「相続放棄の申述」手続案内・Q&A(2026年8月30日確認)
- 仙台家庭裁判所「相続放棄の申述をされる方へ」(2026年8月30日確認)



