「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」という話は広く知られていますが、条件があります。上がるのは、勧告を受けたうえで賦課期日である1月1日までに改善しなかった場合です。そして6倍になるのは敷地のうち200㎡以下の部分で、それを超える部分は3倍です。本記事は国土交通省と自治体の公表資料をもとに、どこが境目かを整理したものです。
放置しているだけで自動的に6倍になる、という理解のままだと、二つの方向に判断を誤ります。必要以上に焦って解体してしまうか、逆に「まだ何も言われていないから大丈夫」と勧告の重さを見誤るかのどちらかです。
通説:「空き家は放置すると固定資産税が6倍」
この言い方自体は、結果としては間違っていません。ただし省略されている部分が二つあります。
一つは「いつ」上がるのか。 もう一つは「どこが」6倍になるのかです。

6倍の正体は「6分の1の特例が外れること」
住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準を軽減する住宅用地特例があります。区分は面積で分かれています。
区分 | 面積 | 固定資産税の課税標準 |
|---|---|---|
小規模住宅用地 | 200㎡以下の部分 | 6分の1 |
一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 3分の1 |
※ 上限は建物の床面積の10倍まで。都市計画税にも別途の軽減がありますが、割合は自治体の資料で確認してください。
つまり「6倍」とは、6分の1に軽減されていたものが軽減前に戻るという意味です。
ここから分かることがあります。敷地全体が一律に6倍になるわけではありません。 200㎡を超える部分はもともと3分の1なので、外れればおよそ3倍です。
北大阪の住宅地であれば200㎡以下に収まる敷地が多く、その場合は「6倍」がそのまま当てはまります。一方、郊外の広い敷地を相続した場合は、6倍の部分と3倍の部分が混在します。「6倍」という一語で自分の税額を見積もると、ずれます。
上がるのは「勧告」+「1月1日」を満たしたとき
こちらが本題です。
対象になるのは二つの区分です。
特定空家等 … 倒壊等著しく保安上危険、著しく衛生上有害、景観を著しく損なっている、その他周辺の生活環境の保全上不適切、のいずれかにあたるもの。
管理不全空家等 … 適切な管理がなされず、放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態。令和5年12月13日に施行された改正空家法で新設された区分です。従来は「特定空家等」になるまで税制上の措置は届きませんでしたが、その手前の段階にも及ぶようになりました。
そのうえで、税額が変わる条件はこうです。
> 勧告を受けた後、改善が見られず、固定資産税の賦課期日である1月1日に至ると、次年度の固定資産税から課税標準の特例が除外されます(越生町)。
東京都主税局も同様に、「賦課期日(1月1日)までに区からの勧告に対する必要な措置が講じられない家屋の敷地」が特例の適用対象から除外される、としています。
勧告を受けた時点では、まだ上がりません。 段階はこうなります。
``` ① 管理不全空家等 / 特定空家等 と判断される ② 助言・指導 ③ 勧告 ← ここではまだ税額は変わらない ④ 1月1日 を改善しないまま迎える ← ここで確定 ⑤ 次年度の固定資産税から特例が外れる ```

境目は日付で、1日違うと1年変わる
ここが実務上いちばん効く点です。
賦課期日は1月1日です。この日の状態で1年分が決まります。
つまり、12月中に改善すれば、その年の1月1日は越えずに済みます。 逆に、1月2日に改善しても、その年度分はもう確定しています。 同じ「改善した」でも、日付が数日違うだけで1年分の税額が変わります。
勧告を受けてから慌てて動く場合、意識すべきは「早く直す」ではなく「1月1日より前に直す」です。この一点だけで、判断の締め切りがはっきりします。
そして、勧告は突然来るものではありません。手前に助言・指導の段階があります。その通知が来た時点が、1月1日から逆算して動ける最後のタイミングになります。
何を確認すればよいか
1. 敷地面積を確認する。 200㎡以下なら6倍、超える部分は3倍です。相続した土地の面積は登記事項証明書で分かります。
2. 自治体からの通知を放置しない。 助言・指導の段階で動けば、勧告に至らずに済みます。
3. 直近の1月1日から逆算する。 勧告を受けている場合、改善の締め切りは「なるべく早く」ではなく12月31日です。
4. 解体と比べる。 解体しても住宅用地特例は外れます。上がる金額は同じでも、解体には費用がかかります。4択の整理は相続した空き家の4択—売る・貸す・住む・壊すを分ける条件にまとめています。
まとめ
「6倍」は面積で変わる。 200㎡以下の部分が6分の1、超える部分が3分の1の軽減です。
勧告だけでは上がらない。 勧告後に改善しないまま賦課期日1月1日を迎えると、次年度から特例が外れます。
境目は日付。 12月中に直せばその年は越えずに済み、1月2日では1年分が確定しています。
固定資産税そのものの仕組みは固定資産税・都市計画税の仕組み—北大阪オーナーの負担目安で扱っています。個別の税額や適用については、物件所在地の自治体の税務窓口へご確認ください。
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出典
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」(2026年8月10日確認)
- 東京都主税局「特定空家等・管理不全空家等の敷地に対する固定資産税・都市計画税」(2026年8月10日確認)
- 越生町「特定空家・管理不全空家等の敷地の固定資産税について」(2026年8月10日確認)



