自筆で書いた遺言書は、法務局に1通3,900円で預けられます。預けた遺言書は家庭裁判所の検認が不要になり、原本は死亡後50年間、画像データは150年間保管されます(法務省)。本記事は法務省・大阪法務局の公式情報をもとに、制度の使い方と北大阪の申請先を整理したものです。
対象は、淀川区・東淀川区の自宅や実家について、遺言を書いて相続に備えようとしている方です。「書いた遺言書をどこに置くか」で、残された家族の手続が変わります。
制度の骨子—2020年開始・1通3,900円
自筆証書遺言書保管制度は、令和2年(2020年)7月10日に始まった、法務局(遺言書保管所)が自筆証書遺言の原本を預かる仕組みです(法務省)。手数料はその後の保管年数にかかわらず、申請時に遺言書1通につき3,900円で、収入印紙で納めます。
預けることの効果は3つあります。第一に、相続開始後の家庭裁判所での検認が不要になります。第二に、原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間管理され、紛失や書き換えを防げます。第三に、相続開始後は全国どこの法務局でも、データによる閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けられます。
申請時には、遺言書保管官が民法の定める自筆証書遺言の方式に適合するかを外形的に確認します。ただし「外形的な」確認であり、遺言の内容の有効性まで保証する趣旨のものではない点は押さえておく必要があります。

保管あり・なしで変わる死後の手続き
制度の案内は「預けるまで」の手順が中心になりがちですが、違いが表れるのは遺言者が亡くなった後です。そこで本記事では、「法務局保管の有無」×「死後の場面」の2軸で違いを編集部が独自に整理しました。
死後の場面 | 自宅などで保管 | 法務局で保管 |
|---|---|---|
遺言書の発見 | 遺族が探す。見つからないおそれ | 遺言書保管事実証明書(800円)で全国の遺言書保管所に照会できる |
家庭裁判所の検認 | 保管者・発見した相続人は遅滞なく検認を請求しなければならない(裁判所) | 不要 |
内容の確認 | 手元の原本のみ | 全国の法務局で閲覧・遺言書情報証明書の交付 |
周囲への伝わり方 | 誰かが見つけて知らせるほかない | 指定者通知(3名まで)と関係遺言書保管通知 |
生前にかかる費用 | かからない | 1通3,900円 |
この表で見ると、3,900円は「死後の手続を1段(検認)減らし、遺言書が発見されないリスクを下げるための費用」と読めます。逆に、費用をかけずに書けることが自筆証書遺言の持ち味でもあるため、預けるかどうかは死後の手続を誰が担うかを想像して決めることになります。
なお、遺言書があっても、不動産の名義変更(相続登記)は別に必要です。相続登記は申請が義務化されているため、相続登記の義務化とあわせて考えておくと、死後の段取りが一続きになります。
申請の手順—本人出頭・予約・様式が3点セット
保管の申請ができるのは遺言者本人のみです。代理人による申請や郵送での申請はできません(法務省)。手続には予約が必須で、大阪法務局はネットの「法務局手続案内予約サービス」を案内しています。
窓口に持参するものは次のとおりです。
- 自筆証書遺言書(本体)
- 保管申請書(法務省サイトからダウンロード、または法務局窓口で入手)
- 本籍と筆頭者の記載のある住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)
- 顔写真付きの本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 手数料3,900円分の収入印紙
申請先は、遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所です。この3つのどれを使ってもよいことになっています(法務省)。
さらに、保管制度を使う場合は、民法の方式(全文・日付・氏名を自書して押印)に加えて様式の決まりがあります(法務省)。ここでつまずくと窓口で書き直しになるため、書く前に確認しておくのが近道です。
用紙はA4で、上5mm・下10mm・左20mm・右5mmの余白を確保します。余白に文字がかかると預かってもらえません。記載は片面のみで、両面に書いた遺言書は預かりの対象外です。
複数ページになる場合は「1/2、2/2」のような通し番号を各ページに書き、ホチキスなどで綴じずにばらのまま提出します。スキャナで読み取るためです。筆記具は消えにくいものを使います。財産目録はパソコン作成や資料の添付でも構いませんが、その全ページに署名押印が必要です。

死亡後に動く2つの通知
この制度には、遺言書の存在を死後に知らせる通知が2種類あります(法務省)。
指定者通知は、遺言者があらかじめ指定した人(3名まで指定可)に、死亡の確認を契機として遺言書が保管されている事実を知らせるものです。遺言書のことを誰にも告げないまま亡くなった場合でも、指定した相手には伝わる設計になっています。
関係遺言書保管通知は、相続人・受遺者・遺言執行者等のうち誰か1人が閲覧や証明書の交付を受けると、残りの全員に保管の事実が通知される仕組みです。一部の相続人だけが内容を知ったまま、という状態になりにくくなっています。
北大阪の申請先—「北大阪支局」ではなく本局
大阪府内で遺言書保管を扱うのは、大阪法務局本局と堺・岸和田・北大阪・富田林・東大阪の5支局の計6か所です(法務省・大阪法務局)。北出張所などの出張所は、遺言書保管事務を取り扱いません。
法務省の遺言書保管所管轄一覧によると、大阪市全域(淀川区・東淀川区を含む)の担当は大阪法務局本局です。「北大阪支局」という名前の庁がありますが、その管轄は吹田市・高槻市・茨木市・摂津市・三島郡で、大阪市北部の区は含まれません。名前だけで判断すると窓口を間違えやすいところです。
つまり、新大阪・淡路・十三エリアに住所がある方が住所地基準で申請するなら、行き先は本局になります。一方で、本籍地や所有不動産の所在地が別の管轄にあれば、そちらの遺言書保管所を選ぶこともできます。なお、不動産の相続登記の管轄はこれとは別の区分けです。詳しくは北大阪の相続登記の管轄で整理しています。
公正証書遺言との違い
検認が不要な遺言には、公正証書遺言もあります。裁判所の案内でも、公正証書による遺言と、法務局保管の自筆証書遺言について交付される遺言書情報証明書は、検認手続が不要と明記されています(裁判所)。
公正証書遺言は、公証人が遺言者の口述をもとに文章化し、証人2名の立会いのもとで作成します(日本公証人連合会)。専門家である公証人が作成に関与する方式です。一方、保管制度付きの自筆証書遺言は、自分で全文を書いたものを法務局が外形的に確認して預かる方式で、内容面の関与はありません。
どちらが向くかは、財産の内容、費用のかけ方、内容の確実性をどこまで求めるかによって変わります。本記事はどちらか一方を推奨するものではありません。判断に迷う場合は、弁護士・司法書士・公証役場などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- 自筆証書遺言は法務局に1通3,900円で預けられ、家庭裁判所の検認が不要になる
- 申請は遺言者本人の出頭と予約が必須。A4・余白・片面などの様式の決まりがある
- 淀川区・東淀川区を含む大阪市の申請先は大阪法務局本局。北大阪支局は吹田・高槻など市外の管轄
- 指定者通知(3名まで)と関係遺言書保管通知により、「見つからない遺言書」になりにくい
手数料や様式は変わる可能性があるため、最新の内容は法務省の自筆証書遺言書保管制度の専用ページでご確認ください。実家の名義が親のままになっている場合は、売却前に必要な登記の整理もあわせてどうぞ。
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出典
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」専用サイト(01 制度とは/02 遺言者の手続/03 様式等についての注意事項/07 管轄・遺言書保管所一覧/09 手数料/10 通知/11 よくあるご質問)(2026年8月30日確認)
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧・遺言書保管所一覧・遺言書保管所管轄一覧」(2026年8月30日確認)
- 大阪法務局「法務局の遺言書保管」「取扱事務一覧表」(2026年8月30日確認)
- 裁判所「遺言書の検認」(2026年8月30日確認)
- 日本公証人連合会「遺言」(2026年8月30日確認)
※ 本記事の情報は2026年8月時点の公式情報に基づきます。



