「長期優良住宅の認定つき」を住宅の質を示すラベルとしてだけ読むと、半分しか読めていません。認定は税の優遇と引き換えに、維持保全計画どおりに点検・補修し、記録を保存する義務を所有者に課す仕組みです。本記事は国土交通省・国税庁・大阪府・大阪市の公式情報で、優遇と義務を一組として整理しました。
結論を先に書きます。新築で取得する場合と中古で買う場合とでは、効く優遇の範囲が違います。中古では、優遇より先に「維持保全の義務と書類を引き継げるか」を確認する順番になります。北大阪(淀川区・東淀川区)の物件なら、窓口は大阪市です。
長期優良住宅の認定の仕組み
長期優良住宅は「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」で、建築と維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請し、認定を受けます(国土交通省)。根拠となる長期優良住宅の普及の促進に関する法律は平成21年(2009年)6月4日に施行され、新築の認定はこの日から始まりました(国土交通省・大阪市)。
増築・改築をしない既存住宅の認定は令和4年(2022年)10月1日から始まりました(国土交通省)。国土交通省の認定実績(令和8年3月末時点)では、新築の認定は累計1,901,046戸(一戸建て1,850,048戸、共同住宅等50,998戸)、既存住宅の認定は累計311戸です。

認定基準—性能と維持保全計画の二本立て
認定基準は国土交通省の整理で5項目です。①構造・設備の長期使用のための措置、②良好な居住水準に必要な面積、③地域の居住環境への配慮、④維持保全計画が適切であること、⑤自然災害への配慮(国土交通省)。
大阪市の案内では、①は劣化対策・耐震性・維持管理・更新の容易性・省エネルギー性などに分かれ、住宅性能評価機関が確認します。住戸面積・居住環境・維持保全計画は大阪市が審査し、面積は戸建て住宅75平米以上、共同住宅等40平米以上です(大阪市)。
見落とされやすいのが④です。「建築後の住宅の維持保全、資金計画」を含む維持保全計画が審査項目に並んでおり(大阪市)、認定は性能の証明と将来の点検・補修の約束がセットになった行政処分です。この約束が義務の根拠になります。
税の優遇—新築と中古で効き方が違う
税の特例は、新築の取得を前提にしたものと中古でも効くものが混ざっています。「中古で認定住宅を買う人」の視点で整理したのが次の表です。
税目 | 特例の内容(公式記載) | 中古の認定住宅を買う場合 |
|---|---|---|
住宅ローン控除(国税) | 中古の認定住宅は令和8〜12年入居で控除期間13年、控除限度額は年24.5万円(特例対象個人31.5万円)。その他の住宅は10年・年14万円(国税庁No.1211-3) | 効く |
登録免許税(国税) | 特定認定長期優良住宅の保存・移転登記は1,000分の1(一戸建ての移転登記は1,000分の2)。令和9年3月31日まで(国税庁No.7191) | 対象外(新築または建築後未使用の取得に限る) |
不動産取得税(大阪府税) | 認定長期優良住宅の新築または新築未使用の購入は控除額1,300万円(一般の新築は1,200万円)。令和13年3月31日まで(大阪府) | 対象外(中古は既存住宅の控除を別途確認) |
固定資産税(大阪市税) | 大阪市の認定を受けて新築された住宅は税額の2分の1を減額。中高層耐火住宅7年間、それ以外5年間(大阪市) | 新築時の措置 |
境界線は明確です。登録免許税と不動産取得税の長期優良住宅向けの特例は「新築・未使用」の取得が条件で、中古で買う人の初期費用には効きません(国税庁・大阪府)。中古で効くのは主に住宅ローン控除の区分で、認定住宅とその他の住宅では控除期間と限度額に差がつきます(国税庁No.1211-3)。
住宅ローン控除には床面積や所得、中古では昭和57年1月1日以後の建築または耐震証明といった共通要件もあります(国税庁)。詳細は住宅ローン控除の中古要件と不動産取得税と登録免許税の仕組みで整理しています。数値は2026年9月時点の公式記載で、適用の可否は税務署・府税事務所・税理士にご確認ください。

認定の裏側にある義務—維持保全と記録の保存
認定を受けた人(認定計画実施者)は、建築工事の完了後、認定を受けた維持保全計画に基づいて維持保全を実施し、建築・維持保全の状況に関する記録を作成・保存する必要があります(国土交通省)。記録には、認定通知書の内容、地位の承継の記録、点検・補修の年月日と内容、委託先などが含まれます(国土交通省)。
所管行政庁は報告を求めることができ、適切でないと認めるときは是正指導や改善命令を行い、改善命令に違反した場合は認定を取り消せます。報告の求めに応じない場合や虚偽の報告をした場合は30万円以下の罰金の規定があります(国土交通省・大阪市)。
大阪市はこれを「維持保全状況調査」として、建築後または認定後5年、10年、20年、30年を経過した住宅から無作為に抽出し、年1回10月から依頼文書を送付しています(大阪市)。臨時点検の目安として、震度6弱以上の地震や特別警報が発令された台風も挙げられています(大阪市)。賃貸オーナーが自主的に組む長期修繕計画と違い、履行を行政が確認できる点がこの制度の特徴です。
中古で認定住宅を買うときの引き継ぎ
相続や売買で認定住宅を引き継ぐ人は、所管行政庁に地位の承継の承認を申請でき、承継すると維持保全計画の内容を引き継いで維持保全を実施することになります(国土交通省)。大阪市では承認申請書に、登記事項証明書や売買契約書の写しなど承継の事実を証する書類を添えます(大阪市)。
大阪市のよくあるご質問には実際の場面が載っています。中古住宅を購入したため前所有者名で調査の依頼文書が届いたという問いへの回答は「報告する必要があります」で、前所有者の地位(権利や維持保全の義務)を承継したことになるため、法第10条の承継手続きを速やかに行うよう案内しています。
もう一つ重い記載があります。認定申請書・認定通知書・維持保全計画書等が一切手元にない場合、再発行は「できません」(大阪市)。住宅ローン控除で認定住宅の区分を使うにも、認定通知書の写し(承継があれば承認通知書の写しも)が必要です(国税庁No.1211-3)。書類が無い認定住宅は、義務だけ残って優遇の証明ができない状態になりかねません。
編集部の整理では、中古で検討するときの確認は3点です。1点目:原本一式の有無。 認定通知書、維持保全計画書、変更認定通知書(あれば)、点検・補修の記録が引き渡されるかを契約前に確認します。2点目:点検の履歴。 維持保全計画の点検時期に対して記録が残っているかを見ます。点検をしていなかった場合、大阪市は維持保全計画書で点検部位と時期を確認するよう案内しており、履歴の空白は引き継いだ側が埋めることになります。3点目:建物の現況。 記録は履行の証拠であって現況の証明ではないため、インスペクション(建物状況調査)と役割を分けて見ます。
既存住宅の認定が全国累計311戸に対し新築は約190万戸ですから(国土交通省)、北大阪の中古市場で出会う「認定住宅」のほとんどは新築時認定の承継案件と読むのが実態に近く、承継の手続きと書類の確認が主戦場になります。
北大阪での窓口と確認先
大阪市内の物件では、認定・地位の承継の窓口は大阪市都市整備局企画部安心居住課(大阪市役所6階、電話06-6208-9222)です。受付は閉庁日を除く月曜日から金曜日の午前9時から午後5時30分(午後0時15分から午後1時を除く)で、郵送受付もあります(大阪市)。淀川区の東三国・新大阪も東淀川区の淡路・下新庄も、所管行政庁は同じ大阪市です。
税の確認先は税目ごとに分かれます。新築の認定長期優良住宅の固定資産税の減額は、淀川区・東淀川区とも梅田市税事務所が担当で、認定通知書等の写しを添えて新築の翌年1月31日までに申告します(大阪市)。不動産取得税は物件所在地を担当する府税事務所です(大阪府)。固定資産税の基本は固定資産税の基礎で整理しています。
共同住宅の認定は累計50,998戸で新築認定全体の約2.7%(国土交通省の実績から編集部算出)と少なく、北大阪で認定つきの中古を探す場合は戸建てが中心になります。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- 認定は維持保全計画の審査を含み、認定後は点検と記録の保存が義務になる(国土交通省・大阪市)
- 中古の認定住宅は住宅ローン控除の区分で優遇があるが、登録免許税と不動産取得税の特例は新築・未使用の取得が対象(国税庁・大阪府)
- 義務は売買・相続で引き継がれ、大阪市では地位の承継の承認申請が必要(大阪市)
- 認定通知書・維持保全計画書は再発行されないため、中古では原本一式と点検記録の引き渡しを契約前に確認する
- 既存住宅の認定は全国累計311戸。中古で出会う認定住宅の大半は新築時認定の承継案件(国土交通省、令和8年3月末時点)
最新の内容は各公式ページで、個別の適用は税務署や宅地建物取引士など専門家にご確認ください。
※本記事の情報は2026年9月時点の公式公表資料に基づきます。
あわせて読みたい
出典(いずれも2026年9月17日閲覧)
- 国土交通省「長期優良住宅のページ」(認定実績は同ページ掲載資料)
- 国税庁 タックスアンサー No.1211-3「中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」
- 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」
- 大阪府「不動産取得税」
- 大阪市「長期優良住宅認定制度」
- 大阪市「長期優良住宅-よくあるご質問-」
- 大阪市「新築された認定長期優良住宅に対する固定資産税の減額措置」



