賃貸物件の減価償却は、建物の構造で法定耐用年数が変わります。国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」によると、住宅用の法定耐用年数は木造が22年鉄骨鉄筋コンクリート造 (SRC) ・鉄筋コンクリート造 (RC) が47年。この2倍以上の年数差が、毎年計上できる経費 (減価償却費) の大きさと、手元に残るキャッシュのタイミングを左右します。本記事は国税庁の公式基準をもとに、構造ごとの償却が家賃収益にどう効くかを整理します。

「減価償却は難しそうで、どの物件も同じようなもの」と考えられがちですが、木造とRCでは収益の見え方がまったく違います。本記事は大家・不動産オーナー向けに、構造別の減価償却の考え方を公式情報から整理したものです。

「減価償却は物件ごとに同じ」という誤解

減価償却は、建物のような時間とともに価値が減る資産の取得費を、一度に経費にせず、使用できる期間 (耐用年数) に分けて毎年少しずつ経費計上する仕組みです。家賃収入から差し引ける「支出をともなわない経費」として、不動産所得の課税額を抑える中心的な要素になります。

ここで見落とされやすいのが、耐用年数は建物の構造ごとに国が定めているという点です。同じ価格の物件でも、木造とRCでは「何年で・毎年いくら」経費にできるかが変わり、結果として税引き後の手残りが変わります。減価償却は「物件ごとに同じ」ではなく、構造が起点になります。

紀三井寺楼門前参道
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構造別の法定耐用年数と償却率 (国税庁基準)

国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」および「減価償却資産の償却率等表」による、住宅用建物の法定耐用年数と定額法の償却率は次のとおりです。

構造

住宅用の法定耐用年数

定額法の償却率

木造・合成樹脂造

22年

0.046

金属造 (骨格材肉厚3mm以下=軽量鉄骨)

19年

0.053

金属造 (骨格材肉厚3mm超4mm以下)

27年

0.038

金属造 (骨格材肉厚4mm超=重量鉄骨)

34年

0.030

鉄骨鉄筋コンクリート造 (SRC) ・鉄筋コンクリート造 (RC)

47年

0.022

軽量鉄骨造は骨格材の厚みで年数が3段階に分かれる点に注意が必要です。全部事項証明書 (登記簿) には骨格材の厚みが記載されないため、確認には施工会社の資料や設計図書が必要になる場合があります。

建物は「定額法のみ」

もう一つの前提が償却方法です。平成10年4月1日以後に取得した建物は、定額法のみで、定率法は選べません (国税庁 No.2100・No.2106)。定額法は「取得価額×償却率」で毎年一定額を計上する方式で、償却期間を通じて経費額がほぼ横ばいになります。

この一本化は、初期に経費が偏る定率法を建物に使えなくし、税収を安定させる狙いがあったとされます。建物は機械などと違って価値が急には減りにくいという実態にも沿った扱いです。さらに平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物も定額法のみに統一されており、賃貸不動産の減価償却は基本的に定額法で考えることになります。

RCと木造で変わる「収益への効き方」

同じ建物価格でも、耐用年数が短いほど1年あたりの償却費は大きくなります。本記事の整理では、構造の違いは次の3点で収益に効きます。

  • 木造 (22年): 償却率0.046と高く、毎年の経費計上額が大きい。課税所得を抑える効果は序盤から強く出る一方、22年で償却が終わる。
  • RC・SRC (47年): 償却率0.022と低く、1年あたりの経費は小さいが、47年という長期にわたって薄く続く。単年の節税効果は小さいが安定的。
  • 軽量・重量鉄骨 (19〜34年): 木造とRCの中間。骨格材の厚みで償却スピードが変わる。

つまり、木造は「短期集中で経費が大きい」、RCは「長期分散で経費が小さい」という設計です。単年の手残りを厚くしたいのか、長期にわたって安定した経費計上を重ねたいのかで、構造の向き不向きが分かれます。

「デッドクロス」という論点

償却期間が短い構造ほど早く直面するのが、いわゆるデッドクロスです。減価償却費は「支出をともなわない経費」ですが、ローンの元金返済は「支出をともなうが経費にならない」ため、減価償却が終わると帳簿上の利益が増えて課税が重くなる一方、実際のキャッシュ支出 (元金返済) は続きます。木造は22年で償却が終わるため、この局面が相対的に早く訪れます。時期や影響は借入条件・自己資金割合で変わるため、実際の判断は税理士への確認が前提です。

木川本町商店街 アーケード商店街
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中古物件の耐用年数—簡便法

北大阪エリアで流通する賃貸物件の多くは中古です。中古資産は法定耐用年数をそのまま使わず、国税庁 No.5404 の簡便法で耐用年数を短く見積もれます。

  • 法定耐用年数を全部経過した物件: 法定耐用年数×20%
  • 一部を経過した物件: (法定耐用年数−経過年数) + 経過年数×20%

いずれも1年未満の端数は切り捨て、2年未満になる場合は2年とします。ただし、取得後に加えた資本的支出が取得価額の50%を超える場合は簡便法を使えません。

簡便法を一般式にあてはめた参考例は次のとおりです (実際の適用は税理士にご確認ください)。

中古物件の例

計算

耐用年数

築25年の木造 (法定22年・全部経過)

22×0.2=4.4 → 端数切捨て

4年

築15年の木造 (法定22年・一部経過)

(22−15)+15×0.2=10

10年

築30年のRC (法定47年・一部経過)

(47−30)+30×0.2=23

23年

築古の木造が投資対象として語られやすいのは、この簡便法で耐用年数が最短まで縮み、短期間に大きな減価償却費を計上できる構造があるためです。一方で償却が早く終わればデッドクロスも早く来るため、短期の節税効果と中長期の資金繰りは分けて考える必要があります。

参考: 建物価格2,000万円の年間償却費イメージ

構造ごとの効き方をつかむために、建物価格2,000万円 (土地を除く) を新築・住宅用と仮定した、定額法による年間償却費の参考計算を示します。これは国税庁の償却率を用いた一般式に基づく参考値で、具体的な税額計算ではありません。

構造

償却率

年間償却費の目安

償却期間

木造 (22年)

0.046

92万円

22年

軽量鉄骨 (27年)

0.038

76万円

27年

重量鉄骨 (34年)

0.030

60万円

34年

RC・SRC (47年)

0.022

44万円

47年

同じ2,000万円でも、木造は年92万円を22年、RCは年44万円を47年かけて計上します。減価償却の対象は建物部分だけで、土地は非減価償却資産として償却できない点も収支計算の前提です。中古の場合は前述の簡便法で耐用年数が縮むため、年間償却費はさらに大きくなります。

家賃収益を読むときの確認軸

構造別の減価償却を家賃収益の判断に落とし込む際は、次の3点を押さえると整理しやすくなります。

  1. 建物と土地の按分: 購入価格のうち償却できるのは建物部分だけ。売買契約書や固定資産税評価額をもとに按分する。
  2. 構造と築年数の確認: 新築か中古か、中古なら経過年数と構造で耐用年数が変わる。軽量鉄骨は骨格材の厚みまで確認する。
  3. 償却終了後の資金繰り: 減価償却が終わる年を把握し、ローン残高との関係 (デッドクロス) を事前に見込む。

家賃相場そのものの読み方は 北大阪の家賃設定は3層分析—HOME's・国交省・競合で決める、空室リスクへの備えは 賃貸オーナーの空室対策—北大阪の需要を読む実務 もあわせてご確認ください。

まとめ

賃貸物件の減価償却を構造別に整理したポイントです。

  • 法定耐用年数: 住宅用は木造22年・軽量鉄骨19〜27年・重量鉄骨34年・RC/SRC47年 (国税庁 耐用年数表)
  • 償却方法: 平成10年4月以後取得の建物は定額法のみ、「取得価額×償却率」で毎年一定額
  • 収益への効き: 木造は短期集中で経費大、RCは長期分散で経費小。木造はデッドクロスが早い
  • 中古の簡便法: 全部経過は法定×20%、一部経過は「(法定−経過)+経過×20%」、最短2年 (国税庁 No.5404)
  • 土地は対象外: 償却できるのは建物部分のみ、購入価格の按分が前提

構造ごとの減価償却は、家賃収入の額そのものではなく「税引き後にいくら残るか」を左右します。物件選びの段階で構造・築年数・耐用年数を確認しておくと、収支計算の精度が上がります。

なお、本記事は国税庁の公式基準に基づく一般的な整理で、計算例は一般式に基づく参考値です。具体的な税額や個別物件の減価償却の適用は、必ず税理士にご確認ください。不動産所得の申告実務については 大阪は礼金ゼロが標準—北大阪エリアの賃貸契約と初期費用の基礎、地価の動向は 1970年制度開始の公示地価—北大阪エリアの土地価格を読む も参照してください。

※本記事の情報は2026年7月時点の国税庁公表資料に基づきます。税制は改正される場合があるため、最新情報は国税庁公式サイトでご確認ください。