不動産所得の確定申告で青色申告特別控除65万円を受けるには、①不動産の貸付けが事業的規模(貸室はおおむね10室以上、または独立家屋はおおむね5棟以上)であること、②複式簿記で記帳し貸借対照表・損益計算書を添付して期限内(翌年3月15日まで)に申告すること、③e-Taxで申告するか電子帳簿保存を行うこと——この3つを順に満たす必要があります(国税庁タックスアンサー No.2072・No.1373)。新大阪・十三・淡路で賃貸物件を持つオーナーが「65万円をどう取るか」を、国税庁の公式情報をもとに順を追って整理します。個別の判定は税務署・税理士でご確認ください。
「どこまでが必要経費か」「自分は65万円と10万円のどちらか」をまとめました。本記事は国税庁タックスアンサーをベースに、確定している制度情報を整理したものです。税額の試算や個別事情の判断は行いません。
不動産所得の確定申告とは
不動産所得は、土地や建物などの不動産の貸付け、借地権など不動産上の権利の設定・貸付け、船舶や航空機の貸付けによる所得です(国税庁 No.1370)。賃貸経営で得る家賃はこの不動産所得に区分されます。
金額の計算式は次のとおりです。
> 総収入金額 − 必要経費 = 不動産所得の金額(国税庁 No.1370)
総収入金額には、賃貸料のほか、名義変更料・承諾料・更新料、返還を要しない敷金や保証金、共益費名目で受け取る電気代・水道代などが含まれます。必要経費には、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などが挙げられ、いずれも「不動産収入を得るために直接必要な費用」で家事費と区別できるものに限られます(国税庁 No.1370)。
この「総収入 − 必要経費」で出した不動産所得から、さらに差し引けるのが青色申告特別控除です。控除額は帳簿の付け方と申告のしかたで10万円・55万円・65万円の3段階に分かれます。

青色申告特別控除は10万・55万・65万の3段階
青色申告特別控除の金額は、満たす要件に応じて次のように決まります(国税庁 No.2072・No.1373)。
控除額 | 主な条件 |
|---|---|
10万円 | 55万円・65万円の要件を満たさない青色申告者 |
55万円 | 事業的規模+複式簿記による記帳+貸借対照表等の添付+期限内申告 |
65万円 | 55万円の全要件+e-Taxでの申告 または 電子帳簿保存 |
10万円から65万円へ上げていく道のりには、順番のある3つの関門があります。入口が「事業的規模かどうか」、次が「複式簿記と期限内申告」、最後が「e-Taxまたは電子帳簿保存」です。以下、この順で見ていきます。
条件1: 事業的規模(貸室10室・独立家屋5棟)
55万円・65万円の控除は、不動産の貸付けが「事業的規模」であることが前提です。事業的規模でなければ、青色申告をしても控除は最高10万円にとどまります(国税庁 No.1373)。
事業的規模の目安として国税庁が示すのは、次のいずれかです(国税庁 No.1373)。
- 貸室(貸間・アパート等):貸与できる独立した室数がおおむね10室以上
- 独立家屋(一戸建て等):おおむね5棟以上
この「5棟10室」は法律の条文そのものではなく、あくまで「おおむね」の目安として示された基準で、最終的な判定は「社会通念上、事業と称するに至る程度の規模」という実質で行われます(国税庁 No.1373)。この一本の線引きが、青色申告特別控除の上限だけでなく、資産損失や貸倒損失の必要経費算入、事業専従者給与の可否まで左右します。
区分 | 事業的規模 | 事業的規模以外 |
|---|---|---|
青色申告特別控除 | 最高65万円(電子申告時)/55万円 | 最高10万円 |
資産損失 | 全額を必要経費に算入 | その年の不動産所得金額が限度 |
事業専従者給与 | 適用あり | 適用なし |
(出典:国税庁 No.1373)
自分の物件が事業的規模に当たるかは、室数・棟数が目安に近い場合ほど判断が分かれます。区分所有や共有などの数え方を含め、税務署・税理士でご確認ください。
条件2: 複式簿記と期限内申告(55万円の壁)
事業的規模をクリアしたら、次は帳簿と申告の要件です。55万円控除には次のすべてが必要です(国税庁 No.2072)。
- 正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
- その記帳に基づいて作成した貸借対照表・損益計算書などを確定申告書に添付し、控除額を記載すること
- その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに申告書を提出すること
現金主義による所得計算の特例を選んでいる場合は、55万円・65万円控除の対象外です(国税庁 No.2072)。単式の簡易簿記でも青色申告そのものは可能ですが、その場合の控除は10万円になります。ここが「10万円組」と「55万円組」を分ける壁です。

条件3: e-Taxまたは電子帳簿保存(65万円への最後の1歩)
55万円の要件をすべて満たしたうえで、次のいずれかを行うと控除額が65万円になります(国税庁 No.2072)。
- 確定申告書・貸借対照表・損益計算書などを、申告期限までにe-Taxで提出する
- 仕訳帳および総勘定元帳を電子帳簿として電子データのまま保存する
つまり65万円と55万円の差は、帳簿の付け方ではなく「提出のしかた・保存のしかた」で決まります。すでに複式簿記で55万円の要件を満たしているオーナーにとって、e-Taxでの提出は追加コストの小さい最後の1歩です。紙で郵送・持参して55万円で止まっているケースは、翌年の申告からe-Taxに切り替えるだけで65万円に届く余地があります。
事業的規模でない場合にできること
貸室が10室、独立家屋が5棟に届かない規模でも、青色申告を選ぶ意味はあります。控除額は最高10万円にとどまりますが(国税庁 No.1373)、青色申告制度そのものは不動産所得・事業所得・山林所得がある人が対象で、一定水準の記帳に基づいて正しく申告する人が受けられる制度です(国税庁 No.2070)。
規模が目安に近いオーナーは、物件を増やして事業的規模に乗せると控除の上限が10万円から55万円・65万円へ変わる可能性があります。ただし規模拡大は借入や空室リスクと表裏一体で、税制だけで判断するものではありません。物件の収支や出口を含めた検討は、空室対策の判断軸や新大阪の中古マンション投資と利回りもあわせてご覧ください。
申請の実務—承認申請書の期限
青色申告には、あらかじめ「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長へ提出しておく必要があります。提出期限は次のとおりです(国税庁 No.2070)。
状況 | 提出期限 |
|---|---|
通常の場合 | その年の3月15日まで |
1月16日以後に新規開業 | 開業日から2か月以内 |
1月16日以後に相続で承継 | 承継日から2か月以内 |
この期限を過ぎると、その年分は青色申告にできず、翌年以降に持ち越しになります。帳簿や書類は原則7年間の保存が必要です(国税庁 No.2070)。賃貸を始めた初年度からの控除を狙うなら、開業のタイミングと申請書の提出期限を先に押さえておくのが実務上の分かれ目です。
まとめ
不動産所得の確定申告と青色申告特別控除65万円について、要点を整理します。
- 不動産所得は「総収入金額 − 必要経費」で計算し、家賃のほか更新料・返還不要の敷金なども総収入に含まれる(国税庁 No.1370)
- 青色申告特別控除は10万円・55万円・65万円の3段階で、55万円・65万円は事業的規模が前提(国税庁 No.2072・No.1373)
- 事業的規模の目安は貸室おおむね10室以上、独立家屋おおむね5棟以上(国税庁 No.1373)
- 55万円には複式簿記・貸借対照表等の添付・3月15日までの期限内申告が必要(国税庁 No.2072)
- 65万円はそれに加えe-Taxでの申告または電子帳簿保存が必要で、差は「提出・保存のしかた」(国税庁 No.2072)
- 青色申告承認申請書は原則3月15日まで、新規開業なら開業から2か月以内に提出(国税庁 No.2070)
事業的規模の判定、経費の範囲、控除額の適否といった個別の判断は、必ず税務署・税理士でご確認ください。制度の詳細は国税庁の公式ページで最新情報をご確認ください。
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※本記事の情報は2026年7月時点の国税庁タックスアンサーに基づきます。税制は改正される場合があり、個別の判断は税務署・税理士にご相談ください。



