遠方に住んだまま、北大阪の部屋の契約をどこまで進められるのか。答えは「重要事項説明も契約関係の書面も、条件を満たせばオンラインで完結できる」です。本記事は国土交通省の公式資料をもとに、対面が前提だった時代から書面電子化までの変遷を整理しました。
重要事項説明の「中身」の読み方は重要事項説明書の読み方で扱っています。本記事が扱うのは「方式」、つまりどこで・どうやって説明を受けるかという側面です。
対面が当然だった重要事項説明—宅建業法35条の前提
宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第35条は、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士(宅建士)が借主・買主へ重要事項を説明し、書面を交付することを義務付けています。制定は1952年(昭和27年)。以来60年以上にわたり、この説明は紙の書面を挟んで対面で行うことが当然の前提とされてきました。
転機は2013年(平成25年)6月14日の閣議決定「世界最先端IT国家創造宣言」です。これを受けた政府のアクションプランで、インターネット等を利用した対面以外の説明方法と、書面の電磁的方法による提供の検討が初めて対処方針として示されました(国土交通省 実施マニュアル)。
つまり、いま当たり前になりつつあるオンラインでの重要事項説明(IT重説)は、10年あまり前に政府方針として検討が始まり、後述する社会実験を経て段階的に解禁されてきたものです。

年表で見る変遷—賃貸が先行し売買が続いた7年
国土交通省の実施マニュアルに記載された経緯を、時系列で整理します。
年月 | 出来事 |
|---|---|
2013年(平成25年)6月 | 「世界最先端IT国家創造宣言」閣議決定 |
2015年(平成27年)1月 | 検討会が「最終とりまとめ」を公表 |
2015年(平成27年)8月31日 | IT重説の社会実験を開始 |
2017年(平成29年)10月1日 | 賃貸取引でIT重説の本格運用を開始 |
2019年(令和元年)10月1日 | 賃貸取引で書面の電子交付の社会実験を開始 |
2021年(令和3年)3月30日 | 売買取引でIT重説の本格運用を開始 |
2022年(令和4年)5月18日 | 宅建業法の改正規定が施行され、書面電子化が法令上可能に |
ここで目を引くのは、賃貸と売買のスピード差です。編集部で数えると、社会実験の開始から本格運用まで、賃貸は約2年、売買は約5年半かかっています。売買は金額が大きく取引も複雑なため、検証検討会が「目立ったトラブルは発生せず、IT重説の実施に支障がない」と確認するまでに長い検証期間が置かれました(実施マニュアル・経緯)。
そして最後のピースが書面です。2021年(令和3年)5月に成立した「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」に宅建業法の改正が含まれ、2022年(令和4年)5月18日の施行で、重要事項説明書等を紙ではなく電子データで受け取ることが可能になりました(国土交通省)。
IT重説の要件—事前交付・双方向環境・宅建士証の確認
IT重説は「オンラインなら何でもよい」わけではありません。国土交通省の実施マニュアルは、対面と同様に取り扱うための要件を定めています。借主側から見ると、当日はおおむね次の流れになります。
説明の前に、重要事項説明書が手元に届きます。 IT重説は、宅建士により記名された重要事項説明書と添付書類が説明の相手方の手元にある状態で実施する必要があります(遵守事項)。電子書面での事前提供も可能です。
映像と音声の双方向環境が必要です。 内容を十分理解できる程度に映像を視認・音声を聞き取りでき、双方向でやりとりできる環境が求められます。マニュアルは、画面の小さいスマートフォンでは図面の提示に馴染まない場合があるとし、端末2台の用意や図面の事前送付といった対応例を挙げています。
宅建士証の確認から始まります。 宅建士はカメラに宅地建物取引士証をかざし、説明の相手方が視認できたことを確認します。画面越しに氏名を読み上げてもらう、といった確認方法がマニュアルに例示されています。名義貸しや無資格者による説明を防ぐための手順です。
通信が乱れたら中断します。 映像や音声に支障が生じた場合、宅建士は説明を中断し、支障のない状態に戻してから再開しなければなりません。解消できなければ中止となり、残りの部分だけを対面での説明に切り替えることも可能です。なお、録画・録音は双方の了解のもとで行うものとされています。

契約書面の電子化—承諾と改変防止措置という条件
2022年5月18日以降、媒介契約書面(34条の2書面)・重要事項説明書(35条書面)・契約締結時書面(37条書面)は、電子メールやWebからのダウンロード等の電磁的方法で受け取れます。ただし条件があります。
第一に、本人の承諾です。事業者は提供方法とファイル形式を示したうえで意向を確認し、書面・電子メール・Webページ上などの方法で承諾を取得する必要があります。一度承諾した後でも、紙に戻したい旨を申し出ることは可能です。
第二に、書面として成立する品質です。電子書面は、受け取った側が出力して紙の書面を作成できること、改変が行われていないかを確認できる措置(電子署名やタイムスタンプが想定されています)が講じられていることが要件です。
なお、IT重説と書面電子化は独立した制度です。紙の書面でIT重説を受けることも、電子書面を受け取って対面で説明を受けることもできます。また、売買契約書そのものへの売主・買主の押印といった民間の取引慣行は、このマニュアルの対象外とされている点にも注意が必要です。
遠方から北大阪へ—非対面で進む工程・現地に残る工程
新大阪は新幹線の駅をエリア内に持つため、東京・九州方面からの転勤や単身赴任の受け皿になってきた街です。遠方からの部屋探しでは、大阪への往復回数をどれだけ絞れるかが時間と費用に直結します。制度と実務を突き合わせて、工程ごとに整理したのが下の表です(編集部の独自整理)。
工程 | 非対面での実施 | 備考 |
|---|---|---|
物件探し・問い合わせ | 可 | ポータルサイト・メール等 |
内見 | 事業者による | 内覧は法律上の義務ではないが、国交省は実施の推奨が望ましいとする |
重要事項説明 | 可(IT重説) | 事業者が対応している場合 |
書面の受け取り | 可(電子書面) | 本人の承諾が前提 |
入居申込・審査 | 事業者による | 各社の手続きに従う |
鍵の受け取り・住民票の異動 | 現地 | 引っ越し前後に現地対応 |
ここから導ける実務上のポイントは一つです。最初の問い合わせの段階で「IT重説と書面の電子交付に対応しているか」を確認すること。制度上は可能でも、実施するかどうかは事業者ごとの判断であるためです。対応可否が分かれば、大阪への訪問を内見の1回に集約する、あるいは内見もオンラインで済ませて入居前の下見に充てる、といった計画が立てられます。
なお、新大阪・十三・淡路の3駅エリアは行政のまちづくり方針で一体的に扱われており、候補を1駅に絞らず比較する探し方とも相性がよい地域です。遠方からの検討であれば、単身赴任の拠点選びを扱った単身赴任で新大阪エリアを選ぶ視点も参考になります。
まとめ—方式の選択肢は広がり、確認すべき中身は変わらない
本記事のポイントを整理します。
- 重要事項説明は60年以上対面が前提だったが、2015年からの社会実験を経て、賃貸は2017年10月、売買は2021年3月にIT重説の本格運用が始まった
- 2022年5月18日の宅建業法改正規定の施行で、重要事項説明書等の電子交付も可能になった
- IT重説には事前交付・双方向環境・宅建士証の確認などの要件があり、通信不良時は中断・中止のルールがある
- 書面の電子化には本人の承諾と改変防止措置が条件となる
- 対応するかどうかは事業者ごとに異なるため、遠方からの部屋探しでは最初の問い合わせで対応可否を確認する
方式がオンラインに変わっても、説明される中身と契約の重みは変わりません。契約手続き全体の流れは賃貸借契約の基礎知識で確認できます。制度の詳細や最新の運用は、国土交通省の公式ページおよび実施マニュアルをご確認ください。
※ 本記事の情報は2026年8月時点のものです。
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出典
- 国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」(2026年8月30日確認)
- 国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」令和6年12月版(2026年8月30日確認)
- 国土交通省 報道発表「平成29年10月1日より賃貸取引に係るIT重説の本格運用を開始」(2026年8月30日確認)
- 国土交通省 報道発表「不動産の売買取引に係る『オンラインによる重要事項説明』(IT重説)の本格運用について」(2026年8月30日確認)


