「避難所」と「避難場所」は、法律上も役割上も別物です。内閣府の説明では、指定緊急避難場所は災害の危険から命を守るために緊急に避難する場所で災害種別ごとに指定され、指定避難所は避難してきた人が一定期間滞在する施設です(内閣府「避難場所に関すること」)。本記事は内閣府と大阪市・淀川区・東淀川区の公式情報をもとに、この違いが淡路や十三の住まいでどう効くかを整理しました。

結論を先に書きます。地震、洪水、大火で向かう先は同じではありません。引越し後は「一番近い学校」を1つ覚えるのではなく、災害の種類ごとに逃げ込む場所と、その後に身を寄せる施設の2段を区の一覧で確かめておくのが実用的です。

「避難場所」と「避難所」—法律上は別の指定

指定緊急避難場所は、災害対策基本法第49条の4に基づき、市町村長が災害種別ごとに指定する「災害の危険から命を守るために緊急的に避難をする場所」です(内閣府)。一方の指定避難所は、同法第49条の7に基づき、災害種別に限らず指定される「避難をしてきた被災者等が一定期間滞在するための施設等」です(内閣府)。片方は「逃げる場所」、もう片方は「泊まる施設」です。

両者は同じ施設が兼ねることができますが、内閣府はそれぞれの趣旨と指定基準に留意した指定が必要としています(内閣府)。学校の運動場が地震時の避難場所で、同じ学校の体育館が避難所、という組み合わせがその例です。

この区別が法律に書かれた経緯には理由があります。平成27年版防災白書によると、東日本大震災では「避難場所」と「避難所」がはっきり区別されておらず、災害ごとに避難場所が指定されていなかったことが被害拡大の一因となりました(内閣府「平成27年版 防災白書」)。この教訓から、平成25年(2013年)6月の災害対策基本法改正で両者を区別する規定が新設されています(同)。

十条銀座西通り
十条銀座西通り

大阪市の5区分と避難できる災害の種類

大阪市は災害対策基本法に基づき、次の5区分で指定を行っています(大阪市「指定緊急避難場所・指定避難所の指定について」)。当初の指定は平成28年(2016年)3月31日で、最新版は令和8年(2026年)3月31日時点です(同)。

大阪市の区分

法律上の位置づけ

大阪市の説明

市内の数

広域避難場所

指定緊急避難場所

大規模火災が延焼拡大した場合の避難先。火災に対して安全な大きな公園など

34か所

一時避難場所

指定緊急避難場所

地震時等の一時的な避難先。公園や広場、学校の運動場など

約1,480か所

津波避難ビル・水害時避難ビル

指定緊急避難場所

津波や洪水(河川氾濫)時の緊急的な避難先。堅固な高層建物の3階以上の階など

約3,000棟

災害時避難所

指定避難所

自宅で生活できなくなった市民が避難生活を送る施設。学校の体育館など

約570か所

福祉避難所

指定避難所

高齢者や障がい者など特別な配慮が必要な方が対象

約360か所

出典:大阪市「災害時の避難場所、避難所について」「指定緊急避難場所・指定避難所の指定について」(2026年9月17日閲覧)

大阪市は避難できる災害の種類を「地震、津波、洪水、大規模火災」と明らかにしたうえで、「災害時には、その災害に対して避難できる避難場所に避難してください。(避難所や避難できない避難場所には避難しないでください)」と注意しています(大阪市「災害時の避難場所、避難所について」)。まず災害に合った避難場所へ、という順序が公式の考え方です。なお大阪市は、法律上の指定の有無で避難場所と避難所の安全性や役割に違いはないとしています(同)。

洪水と地震で避難先が入れ替わる仕組み

上の5区分を災害ごとに並べ直すと、同じ住所でも向かう先が変わることが見えてきます。編集部の整理として「まず逃げる先」と「その後に身を寄せる先」の2段に分けると次のとおりです。

災害

まず逃げる先(指定緊急避難場所)

その後に身を寄せる先(指定避難所)

地震

一時避難場所(近くの公園や学校の運動場)

災害時避難所(学校など)

洪水(河川氾濫)

水害時避難ビル(堅固な建物の3階以上など)

災害時避難所

津波

津波避難ビル

災害時避難所

大規模火災

広域避難場所(大きな公園・河川敷など)

災害時避難所

出典:大阪市の各区分の説明を編集部が災害別に並べ直したもの

地震のときに向かう公園は、洪水のときには「避難できない避難場所」になり得ます。大阪市が一時避難場所を「地震時等」の避難先と定義し、洪水時の緊急避難先を建物の3階以上としているのは、この使い分けを前提にしたものです(大阪市)。淡路の住所ごとの浸水想定は淡路の洪水・内水ハザードの読み方、十三は十三の浸水リスクとハザードマップで整理しています。

逆方向の注意もあります。淀川区は、地震による火災のときに「津波の危険がある淀川河川敷の広域避難場所に避難しないで、災害時避難所・津波避難ビルに避難」するよう案内しています(淀川区)。大火の逃げ先である河川敷が、地震に伴う津波のときには危険側に回る逆転です。地震リスクの前提は上町断層帯と北大阪の地震を参照してください。

駅看板
駅看板

淡路と十三の指定施設—区の一覧で確認できる名前

東淀川区の「防災マップ避難場所一覧」(令和8年2月現在)では、淡路周辺の災害時避難所として、淡路中学校(西淡路4-25-53)、西淡路小学校(西淡路5-5-32)、東淡路小学校(東淡路3-3-32)、柴島中学校(柴島2-8-36)、もと西淡路小学校(西淡路3-14-11)が掲載されています(東淀川区)。一時避難場所には淡路公園、東淡路町公園、須賀森公園、西淡路公園などが並び、広域避難場所は「十三柴島」と「豊里」です(同)。

淀川区の一覧では、十三周辺の災害時避難所として、十三小学校(十三東4-3-6)、十三中学校(十三東5-1-27)、神津小学校(十三元今里2-3-12)、北野高等学校(新北野2-5-13)、英真学園高等学校(十三東5-4-38)が載っています(淀川区)。一時避難場所には十三東公園、十三公園、淀川公園があり、広域避難場所は淀川河川敷(十三大橋~JR京都線)と新大阪駅北側です(同)。淀川区全体では一時避難場所43施設、災害時避難所25施設、福祉避難所15施設です(同)。

注意したいのは、洪水時に使う水害時避難ビルと津波避難ビルが、これらの学校・公園とは別の一覧になっている点です。東淀川区は水害時避難ビル一覧を表計算ファイルとオープンデータで公開し、淀川区は津波避難ビルの登録一覧を別ページで案内しています(東淀川区・淀川区)。学校名を覚えただけでは、洪水時の逃げ先を確認したことにはなりません。

もう一つ、福祉避難所へ直接向かわないことです。淀川区は、福祉避難所は大規模災害時に直ちに開設されるのではなく、一般の避難所の状況判断により開設されると案内しています(淀川区)。配慮が必要な家族がいる場合も、まずは災害時避難所などへ避難し、区の案内に従う流れです。

引越し後1週間でやる確認—5つの手順

以上を踏まえ、淡路や十三へ引越した直後に済ませておく確認を、編集部の判断軸として5つに絞ります。区役所での転入手続きと同じ週に終わらせるのが目安です。

  1. 区の一覧ページを開く。 東淀川区は「防災マップ避難場所一覧」、淀川区は「淀川区の防災マップ」が入口です。大阪市「各区の防災マップ」から24区すべてにリンクされています(大阪市)。
  2. 地震のとき「まず逃げる公園」を決める。 一時避難場所の一覧から自宅に近い公園を1つ選び、名前と町名を控えます。
  3. 洪水のとき「上がる建物」を決める。 水害時避難ビル(津波避難ビル)の一覧から近い建物を確認します。自宅の階数が浸水想定を上回るかは、北大阪の防災4つの判断軸で整理した階数の考え方と併せて見ます。
  4. 家に戻れないとき「泊まる学校」を決める。 災害時避難所の一覧から最寄りの学校を選び、地震用の公園・洪水用の建物とは別に控えます。
  5. 大阪防災アプリを入れる。 大阪市危機管理室が配信するアプリの防災マップでは、災害時避難所や津波避難ビルの位置に加えて浸水想定も地図上で確認でき、インターネット利用時は避難所の開設状況や現在地からのルート案内も可能です(大阪市「大阪防災アプリ」)。

一覧は更新されます。大阪市の指定は新規指定と解除が適宜更新されており(大阪市)、東淀川区の一覧は令和8年2月現在、淀川区の防災マップは令和7年(2025年)12月版です。年に一度は区のページを見直し、控えた施設名が残っているかを確かめます。引越し直後の他の確認事項は引越し後の住みやすさチェックリストにまとめています。

まとめ

本記事のポイントを整理します。

  • 指定緊急避難場所は命を守るために緊急に逃げる場所で災害種別ごとに指定、指定避難所は一定期間滞在する施設。災害対策基本法第49条の4と第49条の7で別々に定められている
  • 大阪市は広域避難場所・一時避難場所・津波避難ビル/水害時避難ビル(指定緊急避難場所)と災害時避難所・福祉避難所(指定避難所)の5区分で、避難できる災害を地震・津波・洪水・大規模火災に分けている
  • 地震はまず公園へ、洪水は建物の3階以上へ、大火は広い公園や河川敷へ。同じ住所でも災害によって逃げ先が入れ替わる
  • 淡路は淡路中学校・西淡路小学校・東淡路小学校など、十三は十三小学校・十三中学校・神津小学校などが災害時避難所。洪水時の避難ビルは別の一覧
  • 引越し後1週間で、地震用の公園・洪水用の建物・滞在用の学校の3つを控え、大阪防災アプリを入れる

一覧と指定内容は更新されるため、最新情報は大阪市・淀川区・東淀川区の公式ページでご確認ください。

※本記事の情報は2026年9月時点の公式公表資料に基づきます。

あわせて読みたい

出典

  • 内閣府 防災情報のページ「避難場所に関すること」(2026年9月17日閲覧)
  • 内閣府「平成27年版 防災白書 第1部 第1章 第2節 2-2 指定緊急避難場所・指定避難所」(2026年9月17日閲覧)
  • 大阪市「災害時の避難場所、避難所について」(2026年9月17日閲覧)
  • 大阪市「災害対策基本法に基づく指定緊急避難場所・指定避難所の指定について」(2026年9月17日閲覧)
  • 大阪市「各区の防災マップ」 https://www.city.osaka.lg.jp/kikikanrishitsu/page/0000139402.html(2026年9月17日閲覧)
  • 大阪市「大阪防災アプリ(大阪市防災アプリ)」 https://www.city.osaka.lg.jp/kikikanrishitsu/page/0000345020.html(2026年9月17日閲覧)
  • 大阪市淀川区「淀川区の防災マップ(津波避難ビル)・避難場所・避難所・非常時連絡先」(2026年9月17日閲覧)
  • 大阪市東淀川区「防災マップ避難場所一覧」(2026年9月17日閲覧)